最近話題のメタバースとは一体何なのか?

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実はギブスンはテクノ音痴でファクスも上手く使えなかったらしいが、パソコン通信を使いこなす初期のハッカーと呼ばれる若者を見て、これこそ未来の社会のイメージだと直感して新しい言葉を作ったが、日本でもそれを「サイバー空間」と言ったり、当時のコンピューターを指す言葉の一つだった「電脳」と結びつけ、「電脳空間」と言ったりした。

当時のインターネットは、まだARPAネットと呼ばれていて、全米に網の目のように張り巡らされたネットワークを基盤や母体を意味する「マトリックス」と表現する人もおり、そのときの用語がそのまま1999年のウォシャウスキー兄弟(当時)の映画の題にもなっている。

VRを表現するさまざまな言葉


新しいコミュニケーションのテクノロジーが出現すると、人類の世界観は大きく変わり、その感覚を新しいユニバースとして表現しようとしてきた。


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15世紀の中ごろに、ヨハネス・グーテンベルクが活版印刷術を発明し、文字で書かれた書物が大量に作られることで、国や地域を超えた知識が広がり世界観が大きく変わったが、この変化を指摘したマクルーハンは『グーテンベルクの銀河系』を書いた。当初は他に「環境」とする案もあったが、この銀河系(Galaxy)という言葉は、まさに本の共同体が創り出すメタバースやサイバースペースを意味するもので、宇宙を意味するユニバースをより具体的に表現したものだ。

「銀河」という言葉は初期のARPAネット開発を主導したMITの研究者J・C・R・リックライダーが地球規模のコンピューターネットワークを構想して1962年に書いた、「銀河間コンピュータネットワーク(Intergalactic Computer Network)」という論文にも使われており、インターネットがもともと一つの宇宙のようにイメージされていたことがわかる。

ザッカーバーグは早くからVR用のヘッドセット(HMD)を作るオキュラス社を2014年に20億ドル出して買収し、次世代のフェイスブックではキーボードばかりでなく、HMDの見せる3D空間の中で相手と交流できる世界をイメージするプレゼンをよくしていたので、最近のメタバースで彼が見せるプレゼンにも新しさは感じられないが、世間ではネットにVRやARを組み合わせたインターフェースがもっぱら話題となり、21世紀に入ってまもなくウェブの世界に参加者のアバターを登場させ流行したサービス「セカンド・ライフ」を思い出す人も多かった。
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文=服部 桂

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