抜け毛に悩む人が増加 原因にはコロナ禍や幹細胞の「脱走」も?

Varangkana Petchson / EyeEm / Getty Images


これまでは、永続的な抜け毛は幹細胞の死滅により引き起こされるとする仮説が一般的に受け入れられていた。幹細胞は、髪を含む体内のあらゆる細胞や組織に成長する能力を持つことで知られている。科学者らは、人が年を取ると毛包の成長を担う幹細胞が最終的に消耗し、そのまま死滅するという仮説を立てていた。

しかしイー博士の調査からは、このプロセスが当てはまらない可能性が示されている。

イー博士らは組織に深く入り込んでリアルタイムの顕微鏡画像を生成できるレーザーを活用し、生きた組織内の毛包を観察する実験を行った。イー博士が麻酔されたマウスの耳内部の毛包をレーザーを使って観察したところ、驚きの発見があった。

研究者らは、動物が年を取り始めると幹細胞が死滅するどころか形を変え、毛包の小さな穴から自らを絞り出すようにして抜け出し、逃げるように去っていったことに気づいた。毛包が老化して消耗すると、幹細胞はまるで不当な労働環境の仕事を去る従業員のように、髪を生やすという職業を捨てているように見える。

イー博士と研究者らはこのような抜け毛の仕組みを発見後、老化が進んだ毛包で活動が鈍っているようだとしてFOXC1とNFATC1と呼ばれる2つの遺伝子を特定した。この2つが、幹細胞の脱走を引き起こしている可能性がある。

抜け毛は全体として非常に興味深い話題で、その原因は新型コロナウイルスの流行から、小さな幹細胞が髪を生やすという役目を逃れることまでさまざまなものがあるようだ。

米国人の頭が過去2年の出来事から回復するにつれ、抜け毛の研究における次のステップはこの抜け毛の仕組みを確かめ、幹細胞が具体的にどこに逃げているのか、どのようにすれば全体的な抜け毛を抑制するために幹細胞の逃亡を防止したり遅らせたりする治療法を開発できるのかを特定することになるだろう。

翻訳・編集=出田静

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