脱炭素社会の切り札、グリーン水素の見通しは明るい

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国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、水素を化石燃料を使って製造する際には、含有エネルギーの約70%が失われる。ただし、無尽蔵かつ無料である太陽エネルギーを利用した水素製造ができるようになれば、こうした非効率は起こらず、現在の主要な燃料よりも安価になるだろう。IRENAは、水素の供給コストは現在、エネルギー単位あたりで天然ガスの約1.5~5倍だとしている。

水素エコノミーのインフラ整備には多大な初期投資が必要だが、その見返りは十分にある。水素を消費地まで輸送するためのパイプラインが建設されれば、それがもともとは(製造に化石燃料を使う)「グレー水素」のためであったとしても、太陽光などを使う「グリーン水素」にも転用できる。そのため、新たなインフラ建設のニーズは抑えられ、グレー水素からグリーン水素への転換は加速するだろう。

水素テクノロジー市場はグローバルだ。プラグパワーは、フォーテスキュー・フューチャー・インダストリーズ(Fortescue Future Industries)と共同で、オーストラリアのクイーンズランド州において、電解槽を生産する大規模工場の建設を予定している。また、電解槽を使ってグリーン水素を生産する段階では、エジプトのOCI NVおよびアブダビ国立石油会社と提携する見込みだ。さらにプラグパワーは、アジア市場での水素発電の普及をめざして、韓国E&Sとのジョイントベンチャーを発表している。

ブレイクスルー・アジェンダ


国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、「ブレイクスルー・アジェンダ」に42カ国が署名した。2030年までに安価な低炭素水素(グリーン水素)を世界に普及させるという目標を達成すべく、欧州委員会は10億ドルを投じる計画だ。

一方、アラブ首長国連邦(UAE)とドイツは、グリーン水素生産のための協力体制を強化する予定だ。UAEはこれとは別に、「水素リーダーシップ・ロードマップ」を発表し、2030年までに世界の低炭素水素市場の25%を供給することをめざしている。

日本は1億ドルを投じ、化石燃料発電から、アンモニア・水素ベースの発電への転換を進めると発表した。韓国は、2040年までに水素インフラ(生産ツール、燃料電池、水素ステーションなど)を整備するための予算として、400億ドルを確保した。

プラグパワーのマーシュCEOが正しければ、グリーンエネルギーによる水素生産はすでに視界に入っている。ここ20年のあいだにたくさんの進歩があったおかげだ。見渡せば、明るい兆しはいたるところにある。

翻訳=的場知之/ガリレオ

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