調査では、大規模な縦断的研究の一環で2016年12月〜2018年1月に集められたデータを使用した。基になった研究では、たばこの使用状況や健康への影響を評価するため全米各地の18歳以上の成人4万5971人にアンケートをとっており、そのなかにはEDに関する質問もあった。
ニューヨーク大学グロスマン医科大学院などの研究者チームは、この質問に回答した1万3711人のデータを分析。このグループでは、EDを経験していると答えた人が5人に1人強(20.7%)、電子たばこ(ベイプ)を現在吸っていると答えた人が4.8%、電子たばこを毎日吸っていると答えた人が2.1%いた。これに基づくと、電子たばこを日常的に吸っている人は、一度も吸ったことのない人よりもEDの報告例が2.24倍多かった。
もちろん、EDの原因としては心血管疾患なども考えられる。実際、EDに関する質問に答えた人のうち、心血管疾患の既往歴がある65歳以上の人は、心血管疾患の既往歴がない20~24歳の人に比べてEDの報告例が1.39倍多かった。
そこで研究チームは、心血管疾患の既往歴がなく20〜65歳の1万1207人に絞ってデータを分析した。すると、このグループでは、EDだと答えた人が10.2%、電子たばこを現在吸っていると答えた人が5.6%、電子たばこを毎日吸っていると答えた人が2.5%だった。そこから算出すると、このグループでは、電子たばこを日常的に吸っている人のEDの報告例は吸ったことのない人の2.41倍となり、心血管疾患の既往歴がある人を含めた場合よりも倍率がさらに上がった。
もっとも、今回の調査研究が示しているのはあくまで電子たばこの常用とED発生の相関関係にとどまり、因果関係は証明できていない。そこではうつ病や不安神経症、特定の薬の服用など、EDの原因となりうるほかの要因は考慮されておらず、EDの定義も人によってかなり違っている可能性もある。
一方で、電子たばことEDが関連している可能性が示されたのは今回が初めてではない。これまでの研究では、たばこやニコチンとEDの関連性が示されている。電子たばこは紙巻きたばこよりは害が少ないかもしれないが、無害というわけではない。一般的な電子たばこにも、ニコチンをはじめ、吸い込むとよくないさまざまな化学物質が含まれている。
ペニスの勃起が続くのは血管が拡張して血液が流れ込んでとどまるからだが、ニコチンは血液に取り込まれるとペニスの血管にも循環し、その拡張を抑制する可能性がある。
この調査研究は米国予防医学ジャーナル(AJPM)に発表された。