最低2回は転職する可能性がある
──お二人が実践されている、固定概念や領域にとらわれず受け入れる、挑戦するというのはまさにインクルーシブ・キャピタリズムに通じるものかと思います。そうした動きを日本で推進していくにはどのような障壁があるでしょうか。
入山:まず、若い世代と中高年世代とでは、だいぶ状況が違うと思います。上の世代は、バブルが弾けるまでの「終身雇用制度」のような昔ながらの仕組みを引きずっているんです。学術的な言い方をすると「経路依存性」と言います。制度や仕組みが過去の経緯に縛られる現象です。
新しい制度や仕組みが入ってこようとした時、たとえそれが優れていたとしても、過去に縛られている世代が抵抗勢力となって受け入れられない。そうやって変われずにきたのが、平成の「失われた30年」と言われる時代です。
ただ、U30のような若い世代には、そうした過去のしがらみはありません。だからすごく自由にやっていていいなと思いますし、期待もしています。
以前ビズリーチ創業者の南壮一郎さんに教えてもらって、なるほどなと思ったことがあるんです。「60-20」という数字なんですけど、60は、20代〜80代まで働いた場合の勤務年数です。そして20は、会社の平均寿命です。
僕らの世代は終身雇用制度があったので、一度入社したら一生その会社にいるというマインドセットがありました。でも今の若い世代は「60-20」、すると、最低2回は転職する可能性がある。それはつまり、企業に依存せず、自分がいかに楽しく働けるか、成長できるところに身を置けるかといった「個人」が大事な時代になってきています。僕は、分散化されたすごくいい時代になってきていると思っています。
理屈じゃなくてパッションが大事
──そうした自由にチャレンジできる環境のなかで、やりたいことに挑戦して「夢」を掴むには、どうすれば良いのでしょうか。
入山:海外では「アントレプレナーシップ」はとても重要な研究分野で、たくさん研究されています。その結果、例えば、事業機会を見つける際には2つのパターンがあることがわかっています。「事業発見型(Opportunity Discovery)」と「事業創造型(Opportunity Creation)」です。
発見型の人は「事業機会とは外的な環境変化であり、その環境を客観的に分析することで見つけられる」と考え、分析することから始めます。一方、創造型の人は「事業機会というものは、まずは事業環境に自ら飛び込んで試行錯誤することで、後で気がついたら生まれているものだ」と考え、とりあえずやり始めます。