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2021.12.29

日本の若者に足りないのは「パッション」?|VERBALx入山章栄

(左から)入山章栄教授、VERBAL


でも、今思うとそれは決してネガティブなことではなかったかな。ずっと海外で生活していたので、日本の音楽業界のしきたりや日本のカルチャーを、いい意味でもう一度知るためのウェイクアップポイントだったんだと思います。

当時はステージで「俺のリリック(歌詞)を聴け!」といったような、強気なスタイルでライブをしていたんです。でも、ファンの人たちは歌詞よりも、僕のファッションに興味を持ってくれていることがわかって。

「あぁ、そうか。自分がカッコいいと思うことを押し付けるのは違うんだな」って、ハッと気づいたんです。その時から、だんだんいろんなことを受け入れられるようになっていって、キャリアを形成していくのが楽しくなりました。

20%の「アリかも」を受け入れる


入山:自分がやろうと思っていたことと、ファンの方々が求めていたことが違うことに気づいた時に、相手(ファン)が求めることを提供することに抵抗感みたいなものはなかったんですか? パッと切り替えられましたか?

バーバル:抵抗は、めちゃくちゃありました。特に自分は「こうだ!」と思ったことにとらわれるタイプなので。

当時のヒップホップ界隈の人たちは、アメリカのヒップホップシーンをそのまま切り抜いて日本に転用したものこそが「リアル」で良いとしていたり、日本独特の村社会になっていたりしたので、僕は、それでは大きな展開になるわけがないと思っていました。

ただ、「自分がカッコいいと思うことを押し付けるのは違うんだな」と気がついてからは、100%のうち20%ぐらい「アリかも」と思えたら、とりあえずやってみることにしたんです。

例えば、デビュー当時はコラボレーションするアーティストの有無に関して狭い視野で考えていました。でも一度挑戦してみたら、そのアーティストへのリスペクトが生まれて、これは面白いぞ、と。「どうせこの人はこうなんだろう」と、自分勝手な固定概念を持っていたことが、もったいなかったなと思いました。

それ以来15年以上、様々なボーカリストを迎える「lovesプロジェクト」を続けています。「とりあえずチャレンジしてみる」という風に頭を切り替えたことで、すごく世界が広がりました。

入山:僕もちょっと似ているところがあります。いろんな人が経済学者の枠を超えたテーマでお話をもってきてくれるので、僕もアリだなと思ったらとりあえずやってみるようにしています。

例えば、マンガや歴史関連の取材がくることもあります。上杉謙信について、とか。やってみると、これが意外と面白いんですよね。

バーバル:僕は今までコラボレーション企画で「やらなければよかった」と思ったことは、一度もありません。やってみると絶対に何か学びがあるからだと思います。

入山:優れた経営者は「何をやっても学びにする」という特徴がありますよね。結果がついてこなくて「あれ?」となっていても、「まあ学びにはなったよね」と思うから失敗にならないんですよ。
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文=久野照美 取材・編集=田中友梨

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