そんなバーバル氏と対談するのは、早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)の入山章栄教授。経済戦略論や国際経営論を専門とし、2019年発売の著書『世界標準の経営理論』が9.5万部を突破した、気鋭の経営学者だ。2人は、Forbes JAPANが“30歳未満の30人”を選出するアワード「30 UNDER 30」のアドバイザーとして推薦・選出に関わった。
そこで、今回の対談のテーマは今年の30 UNDER 30のテーマでもある「インクルーシブ・キャピタリズム」。インクルーシブ・キャピタリズムとは、年齢、性別、有名無名、過去の実績や規模の大小など、立場にとらわれずに資本へアクセスできるようにすることで、より強い成長を目指すというものだ。
2人は、それぞれの専門領域における課題やあるべき姿についてどのように考えているのか。前編では、自身の経験や研究を基に、「夢」を掴むためのヒントを聞いた(後編は12月30日公開)。
期待と現実の間にズレがあった
──バーバルさんは、アーティストとしてデビューするまでの道のりで、何らかの障壁を感じたことはありましたか。また、それをどのように乗り越え、チャンスを掴まれたのでしょうか。
バーバル:インターナショナルスクールに通っていた16歳の時、友人の☆Taku(Takahashi)のバンドに参加して、ライブ活動をしていました。オーディション番組にデモテープを送ったら優勝し、いくつかのレコード会社からメジャーデビューのオファーをいただくこともありました。
ただ、うちは親がすごく厳しかったんです。ラップで食べていくというのは、親にとって現実性のない話だったので猛反対されました。それでオファーは受けずに、幼少期に過ごしたことのあるボストンに戻り、ボストンカレッジに入学しました。哲学とマーケティングを専攻していたんです。
その後、大学院生だった1998年に冬休みを利用して帰国し、再び☆Takuと一緒に音楽活動を始めました。その時には、タイミングよくヒップホップブームになっていて。共通の友人のLISAと3人で、昔からやっていたことをそのまま続けたら、とんとん拍子でデビューすることが決まり、その後も順調に進んだ。そういう意味では"障壁"みたいなものは感じなかったですね。
ただ、当時行っていた音楽活動が、自分の思い描いている「やりたいこと」からちょっとかけ離れていたので、そこで壁に当たったという感じはありました。
期待と現実の間にズレがあったんです。自分が思い描いていた“カッコいいこと”とか、“アーティストってこうでなければ”って思うこととか、“音楽活動ってこうでしょう?”とか……。最初のころは、そのズレが引っかかり、活き活きと音楽活動ができませんでした。