ビジネス

2022.01.03

スマホ用半導体を自動運転向けに進化させたクアルコムの強み

クアルコムの社長 Cristiano Amon(Getty Images)

半導体大手クアルコム(Qualcomm)は、自動車分野でも存在感を増している。近年の新車の大半はモバイルデータ接続が使用できるが、それを可能にしているのはクアルコムのモデムだ。

同社は車の主要機能を実行するプロセッサの分野でもシェアの拡大を図っている。インフォテインメントシステム用チップからスタートしたクアルコムは、2022年以降はゼネラルモーターズなどの自動車メーカーと提携し、運転支援機能や自動運転機能向けチップを開発する計画だ。

クアルコム製SoC「Snapdragon 820A」は、かつて多くのアンドロイドスマートフォンの上位機種に搭載されていたチップを車載用に最適化したものだ。ジャガー・ランドローバーなどの自動車メーカーは、インフォテインメントシステム向けにこのチップを採用している。クアルコムは、2020年のCESで新世代のSoCとAIアクセラレータを基盤にした自動運転向けプラットフォーム「Snapdragon Ride」を発表した。

Ride SoCは単体で利用することもできるが、AIプロセッサと連携させたり、複数のチップを組み合わせて特定のアプリケーションに求められる性能を提供することもできる。Snapdragon Rideは、2022年春発売予定のキャデラック初のEV「リリック(Lyriq)」に搭載されることが決まっており、これが最初の実装事例の1つになる。

ゼネラルモーターズの広報担当者は、この自動運転向けプラットフォームがLyriq向けに新たに開発されたものか、2021年モデルにもクアルコムのプラットフォームが搭載されているか明らかにしていない。スーパークルーズのオリジナル版は、2017年にキャデラック「CT6」に初めて搭載されたが、2021年リリースの第2世代は、新しいコンピュートプラットフォームに移行した。

2021年に自動車業界がチップ不足に悩まされたことを考えると、わずか1年で再び大がかりなプラットフォーム変更を行うのは異例だ。しかし、そのことが今回の変更の要因になったのかもしれない。ゼネラルモーターズは、2023年にリリース予定の次世代運転支援システム「ウルトラ・クルーズ(Ultra Cruise)」にもSnapdragon Rideを採用する予定だ。
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編集=上田裕資

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