退職年齢が上がってきているため、専門家は各社に対して、更年期が従業者に与えうる悪影響を認識するべきだ、と警鐘を鳴らしてきた。更年期をめぐる負の烙印(スティグマ)や、沈黙を強いられる状況を一掃できるよう、支援体制を整える必要があるというのだ。
更年期による症状に悩まされるのは、一般的には45歳頃から55歳頃までだが、場合によっては、30代で更年期に入る人もいる。更年期に差し掛かると、ホットフラッシュと呼ばれるほてりやのぼせのほか、月経不順などの症状が出ることがある。1日中ずっと集中することに困難を覚える人もいる。
更年期による症状は、対処が難しい場合がある。英王立裁判所・審判所サービス(Her Majesty’s Courts and Tribunals Service:HMCTS)によると、労働審判所に申し立てられたケースで、更年期に言及する人の数が際立って増えていることが明らかになった。更年期への言及回数は、2018年の最後の9カ月で5回だったが、2021年の前半6カ月で10回に上った。
労働審判所での審議では、従業員が差別されたり孤立を感じたりしたというケースで、更年期に言及されることがある。更年期を扱うコンサルティングサービスMenopause Expertsが発表した数も、HMCTSが公表した言及回数の増加傾向を反映している。同団体によれば、2021年前半6カ月のあいだに労働審判で更年期に言及されたケースは116件。言及回数がこのペースで増え続ければ、2021年末には232回に達すると予想されている。
こうした数字は、全体像を明らかにしていない可能性がある。そこには、非公式で和解した争議が含まれていないからだ。しかし、法律事務所リンクレーターズ(Linklaters)のパートナー、シネイド・ケーシー(Sinead Casey)は英紙『タイムズ』に対し、こう述べている。「更年期をめぐる革命が訪れようとしている。更年期についての意識向上と支援強化を求める声が高まっているからだ。企業側は目を覚まさなくてはならない。そうしなければ、法的リスクにさらされやすくなる」