キャリア・教育

2021.12.11 13:00

従業員の更年期、企業側が支援体制を整えるべき理由


会計事務所で働き始めて10年になる女性「エル」の例を見てみよう。彼女が更年期に差し掛かったのは5年前だ。「私の場合、生理が極端に不順になったのが始まりだった。それまでずっと規則正しかったのに、突然予測ができなくなった」とエルは振り返る。「それに続いて睡眠障害が始まり、ホットフラッシュも1日中、時間に関係なく起こった。頭痛にも悩まされた」

エルが悩まされた症状は、更年期によく見られるものだ。英国民保険サービス(NHS)のサイトでは、更年期の典型的な症状がリスト化されている。他にも、忘れっぽくなったり、寝汗をかいたり、関節痛や口腔内の不快感に悩まされたりする人もいる。

更年期に入った時にかなり戸惑いを覚える人たちもいるが、エルの場合は、アドバイスをくれたり、手を差し伸べてくれたりする知人や友人などがいた。「周囲の人たちが、起こりうる症状について情報をくれた。自分としては、症状にうまく対処できていたと思う。けれども、職場で自分に対する態度が変わり始めたことがわかり、耐え切れなくなった」とエルは話す。

「私は、自分が大事に思っている会社で、自分の地位を少しずつ築いてきた。ところが、上司が突然、私を素通りして、他の人にプロジェクトを任せるようになった。私が取り組んでいたことを、他の人にプレゼンするよう頼んだりした。そして時おり、母親たちにも『ザ・チェンジ(更年期を意味する表現)』が始まった、と言及するようになった。そういう態度は本当に、プロフェッショナルらしくないと感じられた」

エルは、娘や友人と話をしたあと、自分が直面している問題について、社内の人材管理チームに相談することにした。彼女の訴えはそれなりに適切に受け止められ、エルと上司のあいだでは、更年期をめぐる症状に悩む従業員を対象にした支援体制の整備についての話し合いが始まった。

「不満を申し立てるときは、非常に勇気が必要だった。けれども、自分が申し立てなければ、同様の症状を抱えながら黙って耐えている同僚が他にもたくさんいることが認識されなかっただろう。誰もがみな、孤独を感じていた」とエルは話す。「更年期をめぐる問題でいちばんつらかったのは、自分が自信を持っていた能力について、周囲から疑われたことだった」
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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