自ら肥料を作る農作物
現在、世界では作物の生産性を高めるために、年間1億1000万トン以上の窒素肥料が使用されています。もし、大豆や豆などのマメ科植物のように、作物が自ら窒素を取り込み、アンモニアの形で自らに「固定」することができたらどうでしょうか。現在、研究者たちは、最先端の新興テクノロジーの一つとしてトウモロコシやその他の穀物などマメ科以外の作物でも自家受精させることを目指しています。
一つのアプローチとして、マメ科植物とバクテリア間の共生関係を模倣し、マメ科植物に存在する、自ら養分を作り蓄えることができる根粒を作る研究が進んでいます。その他、通常は穀類の根に生息し、根粒を形成しない土壌細菌から、大気中の窒素を植物に適したアンモニアに変換するのに重要な成分となるニトロゲナーゼを生成する研究も行われています。
息を吐くだけで病気を診断
近い将来、患者がただ息を吐くだけで病気の検査ができるようになるかもしれません。新しい呼気センサーは、人間の呼気に含まれる800以上の化合物の濃度をサンプリングすることで病気を診断することができます。例えば、呼気中のアセトン濃度が高いと糖尿病が疑われるように、このセンサーは、呼気中の化合物が金属酸化物半導体を通過する際の電気抵抗の変化を検出し、そこで示されたデータをアルゴリズムによって解析します。
この新しい技術は普及に向けて改良が必要ですが、2020年3月に中国の武漢で行われた研究では、センサーは新型コロナウイルスの検出において95%の精度、また患者の識別では100%という驚くべき高い感度を示しました。
呼吸による病気の検査。イメージ: Reuters/Chen Lin
オンデマンドで医薬品を作る
現在の医薬品は一般的に大規模なバッチで製造されており、世界各地で複数の工程を経てやっと完成に至ります。このプロセスには何百トンもの材料が使われ、完成までに数カ月かかることもあり、一貫性と信頼性のある供給には課題があります。しかし、マイクロ流体工学とオンデマンド医薬品製造の進歩により、一般的な医薬品は必要に応じてオンデマンドで製造することができるようになりました。その数は少ないながらも増えつつあります。
このプロセスは「連続フロー製造」とも呼ばれ、チューブを介して原料を小さな反応器に移すものです。この薬は、遠隔地や野戦病院において持ち運び可能な機械で製造することができ、個々の患者に合わせて投与することができます。しかし、この新技術に要する高いコストを削減することが課題となっています。