ビジネス

2021.12.09

米国で盛り上がる「空箱上場」 マネックスCEO松本が日本導入に疑問を呈す理由

マネックスグループCEO 松本大(撮影=小田駿一)


上場審査の点でも違います。先ほど話したように、アメリカの従来のIPOでは過去の数字しか見てもらえない。過去の業績よりも将来に賭けている会社は、パイプ投資家からの納得を得てSPAC上場します。

最終的に行われるSECによる上場審査は、あくまでも形式的なものです。その企業がどういう会社かは関係なく、提出書類に不備がなければ通過できる。

日本では、SPACとの合併が実現しても、東証が「この会社は上場会社に相応しいか」「この業態は社会的に安定的な認知を得ているか」など厳しい目で上場審査を行うため、実績が足りない会社は通らない可能性がある。

東証JPX
Getty Images

そもそも東証は実績とともにプロジェクションを見ます。SPACを活用しなくても、未来の成長に対する値付けをしてもらえるわけです。

だから日本にSPACを導入するメリットが薄いんですよ。

また会計基準で見ると、日本はJ-GAAPという基準を使います。上場を目指す企業が、成長のために積極的なM&Aを行っても、買収価格が吸収先企業の純資産額を上回ると損失として計上します。日本の会計基準上、償却負担が発生しPL(損益計算書)がパッとしないので値段がつかない。

アメリカは、自動的な減損処理がないEBITDAという算出方法を用います。SPAC上場を目指すような会社は、成長のために買収や設備投資を次々行い、それでいてPLはぶれないんです。

SPAC、パイプ、会計のやり方、SECあるいは東証審査の方法、これらすべてが繋がってエコシステムができています。しかし日本のエコシステムではSPACは機能しません。事実認識が甘いのではないかと思います。

文=露原直人 撮影=小田駿ー

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