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2021.12.09 07:00

米国で盛り上がる「空箱上場」 マネックスCEO松本が日本導入に疑問を呈す理由

マネックスグループCEO 松本大(撮影=小田駿一)

マネックスグループCEO 松本大(撮影=小田駿一)

マネックスグループは11月4日、22年上半期をめどに、子会社の米トレードステーショングループ(TSG)をニューヨーク証券取引所に上場させると発表した。

TSGは2000年に設立され、個人や機関投資家に、トレードプラットフォームを提供するネット証券会社だ。

現在、稼働口座数14万5000、預かり金は100億ドル(21年3月期時点)で、これを24年には97万2000口座、預かり資産240億ドルまで成長させることを目指している。

今回TSGの上場にあたって用いられるのは、従来のIPOと異なるSPACという手法だ。

これまで未上場企業は、着実に業績を伸ばし企業価値を高めることで上場を目指す方法が主流だった。

SPACは、起業家や投資家が設立し、企業の買収を目的に上場する会社のことを指す。事業を持たないことから「空箱」とも呼ばれる。

未上場のスタートアップは、この空箱に吸収される形で、通常のIPOよりも短い時間で上場を果たすことができるのだ。

2020年からアメリカで、SPACを使った上場件数が急速に増え、同年は248件と従来のIPOの半数以上を占めた。21年はすでに559件に上る。

日本では取り入れられていないSPAC上場だが、導入検討の動きも出始めている。しかし同社CEOの松本大は「SPACを活用した上場は日本で機能しないのでは」と疑問を呈す。松本が懐疑的な見方を持つのはなぜなのか。


──SPACを活用した上場を選んだ経緯は

背景としては、TSGが業績を伸ばしていて、成長のための方程式がわかってきたという点がある。成長資本、資金を投下しマーケティングの強化などを行うことでより成長させる狙いです。その成長資本を調達する方法として何がいいか、今年の春ぐらいから検討を始めました。

まずマネックスグループではなく、TSGを主体として資金調達をさせようと決めました。TSG自体に成長のストーリーがあり、実際にビジネスを展開しているアメリカという世界最大の資本市場で調達をさせるのが一番効率的であると。

お客様も、主に現地の個人投資家なので、次の顧客を獲得するためにもTSGがアメリカに上場してること自体が宣伝になりマーケティングになる。

経営陣もアメリカ人なので、例えば譲渡制限付き株式(一定の勤務条件を満たすまで譲渡できない株式)など、彼らに対する報酬制度を作るにしても、あるいは優秀な人材を採用するためにもTSG自体が上場をしている方が都合が良いし、資本はアメリカで調達しようと決断しました。

そのうえでなぜSPACを活用して上場したか。

SPAC
Shutterstock

アメリカのIPOでは、審査の際にプロジェクション(事業の構想や将来性)を提示できず、過去の成績や類似会社との比較で値付けされます。一方でSPACを含めた合併の場合は、プロジェクションを明かして、未来に向けての説明を行うことで値段が付く。

今回は、成長戦略を実行して業績を伸ばそうというギアチェンジのタイミングなので、SPAC上場を選びました。
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文=露原直人 撮影=小田駿ー

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