ただ、私たちの「社会のメンタルヘルス」は、このパンデミックが起きる以前から、大きな打撃を受けていた。燃え尽き症候群の増加、ワークライフバランスに関する不満の高まり、うつ病の患者と自殺者の急増は、次々と発表されるどの調査でも、明確に示されていた。
メンタルヘルスの問題は、過去30年ほどの間で急激に増大した。だが、残念ながらこの分野におけるニーズへの対応は、不十分なままだ。その主な理由の一つは、十分な訓練を受けた専門家が不足していることだ。
そして、そうした中で期待が高まってきたのが、通信技術を利用して必要な支援を提供する「テレメンタルヘルス」サービスだ。
変化する業界と課題
米保健福祉省は、こうしたサービスを「対面でのメンタルヘルスケアより障壁の少ない、よりプライバシーを保護した形でのサービスが提供できるもの」だと説明。最近では、「テレビヘイビアル・ヘルス(Telebehavioral health)」サービスと呼ぶようになっている。
この分野の高い価値を認識する業界大手は、関連のあるテクノロジーに何十億ドルもの資金を投じてきた。例えば、瞑想アプリのヘッドスペース(Headspace)は、オンデマンドでメンタルヘルスサービスを提供するジンジャー(Ginger)との合併を発表。新会社ヘッドスペース・ヘルス(Headspace Health)の評価額は、30億ドル(約3400億円)を超えた。
2020年末には睡眠・瞑想アプリのカーム(Calm)が、ベンチャーファンドから多額を調達。評価額を20億ドルとした。また、リモートやバーチャルで診療が受けられるカーボン・ヘルス(Carbon Health)はユーザーを急速に増やしており、評価額も30億ドル以上に上昇している。
だが、デジタルヘルスのソリューションにも問題はあり、批判される面もある。その一つが、ある意味ではテクノロジーと画面を見ている時間の増加そのものが、メンタルヘルスの危機の拡大を招いてきたということだ。