『小飼弾の超訳「お金」理論』(小飼弾著、光文社刊)では、お金に苦労しながらも成功を手にした投資家が、現代人の「お金」に関する誤解を解きほぐす。お金と世界の仕組みを知れば、あなたの生活も、変わる。
消費税は公平なようで不公平
年金、国民保健、消費税、所得税に住民税……。ただ生きているだけでも、お金はかかる。もちろん産業や生活の基盤となるインフラ設備は欠かせないし、人々が安心して生活するためには社会保障も必要だ。そのために国民は少しずつその費用を負担し、税金として納める。疑うべくもない当然の制度として、私たちは税制度を受け入れている。
しかし、小飼氏はそんな税制度には「歪み」があると指摘する。
「消費税は持てる者のある意味『陰謀』がうまくいった結果なんですよね。これは陰謀論というより、お金の仕組みからすると必然なのかもしれませんが。
持てる者=金持ちたちの立場からすると、消費税はとてもおいしい税制です。
消費税は一見フェアに見えてこれ以上ないほど、アンフェアな税制です。単にアンフェアなだけでなく経済の邪魔もしてしまう。これほど経済の邪魔をする税制は他にありません」
そう話す理由は、「消費」されるものにしか税がかからないという消費税の特徴にある。
お金に余裕がある人ほど、支出の中で株などの金融商品や不動産を買う割合が増えるが、そうした「投資」は「消費」ではないため消費税はかからない。節税できる上に、うまくいけばその投資はさらにお金を生む。つまり、金融資産というストックを「持てる者」は「消費」にあてはまらない買い物でさらに資産を増やすことができるわけだ。
「投資」は「消費」ではないため消費税はかからない
今の税制は貧乏人の負担が大きい
そうは言っても、社会保障の財源確保のためには消費税は仕方がない。上がり続ける消費税を合理化するそんな論がある。一方小飼氏は、消費税とは反対に下がり続けた所得税を取り上げ、これを「大嘘」だという。
消費税導入前の時代、所得税の最高税率は75%だった。これは高収入の人にとって不公平だという声が経団連など財界を中心に起こり、彼らは所得税の累進性を下げようと政権に圧力をかけた。それ以降、所得税の累進性は少しずつ下げられ、代わりに消費税が導入され、消費税増税が繰り返された。
「今や日本の歳入に占める消費税の割合は、所得税を上回っています。消費税は、所得税よりもはるかに逆進性の高い、つまり貧乏人の負担が大きい税制です。……(中略)
日本よりも消費税率の割合が高い国はいくらでもある、北欧などでは消費税率が25%にも達しています。これをもって日本の消費税率はまだまだ低いという人もいますが、この意見はちょっとおかしい。日本の消費税は、税率が『ようやく二桁パーセント』であるにもかかわらず、所得税を抜こうとしているのです。
なぜこんな奇妙なことが起こるのかと言えば、税制がきちんと設計されてないからにほかなりません」
現在、所得税は10種類に分けられその種別により課税率も異なるが、それによると給与に対する課税が最大40%以上にもなるのに対して、土地や借地権、建物、株式等の譲渡、株式から得られる配当にかかる税率は最大20数%だ。ここでも税制の歪みとも言うべきものがある。
「考えてみてください。労働の対価として手に入れた1円と、株式の配当から得られた1円も、本来は同じ1円のはずじゃないですか?1円の所得に対して、税金をかけるのであれば、同じ額の税金をかけるべきでしょう」