分配下手な日本政府
小飼氏は、さらに税制の問題点をあげ、私たちが当然と思っていることにゆさぶりをかける。
例えば、社会保障の財源を厚生労働省と財務省が別々に集めていること。これは単純に効率が悪いというだけでなく、MECE(ミーシ―:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)になっていない、すなわち「漏れなく・重複なく」管理されていない点に問題があるという。
「MECEになっていないというのは、財務省と厚生労働省の集めるお金に、重複や漏れがあるということです。健康保険や年金の保険料は財務省を通っていませんが、こうした保険料として集めたお金を配ることに関しては財務省も大きく関わっている。お金を集める省庁が、どうやって配るのかも差配していては、合理的配分が行えるわけがありません」
小飼氏自身は、このような穴だらけの税制によって「得をした側の人間」だと自称する。
「資産運用をして得た利益についてたくさん税金を払いましたが、『額に汗して働いて得た給料』にかかる税率に比べればずっと低い。
僕は得をしましたが、日本全体はそんなに得をしていません」
変わらない労働者の給料、遅れるインフラ整備、科学研究の分野では予算が絞られ世界に後れを取っている。公教育に対しても十分な資金がつぎ込まれてはおらず子育て世帯の負担は増えるばかりだ。小飼氏はそんな状況を概観して次のように言う。
「お金の分配さえ上手にできていたら、みんなもっと楽に楽しく暮らせていたかもしれない。『あり得た豊かな可能性』を、私たちは失ってしまったのです」
(この記事は、小飼弾著『小飼弾の超訳「お金」理論』から編集・引用したものです)