NBA観戦の興奮を日本へ! 沖縄から始まる「スタジアムビジネス新時代」

コートの真上からつるされた510インチの大型ビジョンは、 試合だけでなくコンサートでも威力を発揮する。


プロスポーツ不毛の地で受けた衝撃


元Jリーグチェアマンの川淵三郎によって、バスケット界が「Bリーグ」に統一されたのは2016年。沖縄市の桑江朝千夫市長がコザ運動公園内に、総工費約162億円のアリーナ建設を公約に掲げたのは、14年。こうして琉球ゴールデンキングスのホームタウンとして沖縄市が決定した。

沖縄を選んだ理由は明白。米国統治下時代からNBAの試合を誰もがテレビ観戦できたうえ部活もレベルが高く、バスケを支える土壌は整っていた。だがその一方、スポーツ観戦が有料という感覚がない。琉球ゴールデンキングスが旧bjリーグに初参戦した07年11月3日に試合会場で見た出来事を木村は忘れていない。

「当日券販売窓口の後ろで立って見ていたんですが、やってきた地元の男性にスタッフが『3000円です』と伝えると、『お金取るの? じゃあ帰る』と。なるほど、プロスポーツがない沖縄にプロチームをつくるとはこういうことなのかと、その瞬間、プロの価値を認めてもらうことの難しさを教えてもらった気がしました」

当初のゴールデンキングスは、チケットのセット販売など営業努力で高収益に繋げた。いまはアリーナの魅力を前面に、高付加価値商品として販売し、成功している。


観客席の傾斜はゲーム観戦が最適となるすり鉢状の設計。

木村は、プロチームの主たる収益はあくまでチケット収入であるべきだと考え競技の場が醸す雰囲気を重んじる、“感動系”の経営者だ。自分たちがつくり出すものに魅力がなければ、客はチケットを買わない。いずれアリーナの外壁にツタがはうように、スポーツが文化として定着することを、木村は夢見ている。


バスケットコートを模したラウンジも高揚感をかき立てる。試合だけに集中しなくてもいるだけで楽しめるような工夫や、人が集まる場のつくり方は、広島のマツダスタジアムが手本に。



木村達郎◎1973年生まれ。筑波大学卒業、米エマーソン大学院修了。バスケ好きが高じて2006年琉球ゴールデンキングスの運営会社、沖縄バスケットボールを創業。19年、沖縄アリーナ設立。同年7月より同社会長。

文=武田頼政 写真=平岩 亨

この記事は 「Forbes JAPAN No.085 2021年9月号(2021/7/26発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事