Session 3「マネーフローのデジタルトランスフォーメーション−その先に創造される未来の生活とは?−」
Session 3では、レオス・キャピタルワークス代表取締役会長兼社長最高投資責任者の藤野英人、READYFOR代表取締役CEOの米良はるか、日本ユニシス戦略事業推進第二本部グループマネージャーの北村哲史がマネーフローのDXについて語り合った。
藤野によると、日本人の個人金融資産は約2000兆円だが、半分が現金であり、そのうちの100兆円は “タンス預金”として家の中にある。そしてそれがマネーフローを阻害している一因となっているのだと言う。ゼロ金利の時代に現金は価値を生まない。100兆円の一部でも消費やクラウドファンディング、株式投資、寄付、あるいは研究開発投資に回すべきだと藤野は主張する。
その選択肢のひとつであるクラウドファンディングを2011年、日本ではじめて立ち上げた米良は、コロナ禍で苦しむイベント事業者に手数料無料でプラットフォームを提供した実績を紹介した。その後、医療現場や困窮者を支えるNPO法人などへの支援にも広がっていったと言う。
米良によると、デジタルによってお金に困っている人が顕在化し、迅速かつ返済の必要がない資金調達手段として、クラウドファンディングはプレゼンスを高めた。投資する側にとっても、従来の寄付では最終的にお金がどこに流れているかがわからない不安があったが、クラウドファンディングではそれが明確になる。「自分が大切だと思っているものにお金を届けることで、社会を守る一員になれたという気持ちをもつきっかけになったのではないか」と米良は分析する。
左から、米良はるか READYFOR代表取締役CEO、藤野英人 レオス・キャピタルワークス代表取締役会長兼社長最高投資責任者、北村哲史 日本ユニシス戦略事業推進第二本部グループマネージャー
クラウドファンディングはマネーフローの活性化に寄与しているが、それだけでは限界がある。日本のマネーフローを阻害するボトルネックになっているのは、日本人が個人主義であり、「社会や寄付団体などと心がつながっていないからだ」と藤野は指摘する。
藤野によると、アメリカ人にとっての寄付は社会とつながることであるため、自分のお金が減ったとは考えないが、日本人は、寄付であっても自分の財布の中からお金がなくなると喪失感が強い。社会と心を通わせつながることで、お金をホームポジションとする考え方から脱却することが大事だと藤野は提言する。
それを受け北村は、日本ユニシスが提供するキャッシュレスをつなぐ電子マネープラットフォーム「doreca」を紹介し、社会とつながるための手段になることを目指していることを明かした。
「dorecaは、単純な電子マネーをチャージする仕組みではありません。受け取る側と払う側の立場がそれぞれあるので、その方々の思いまで含めて、我々は届けなければなりません。困っている方に対しては、dorecaに集まってきたプレイヤーの方々のコミュニティで助け合いを醸成することができるところまで、サービスを大きくしていきたいです」