新型コロナウイルスの影響で、2021年第1四半期には、カードやスマートフォンを使った非接触型決済が前年同期比で10億件以上増えている。非接触型の決済が注目を集める中、懸念されるのがセキュリティ面だ。
こうした問題にいち早く取り組んだ三井住友カードでは、今年2月からカードに番号を印字していない「ナンバーレスカード」を発行し始めた。クレジットカード番号の盗み見による不正利用を防げると20代、30代の新規利用者が急増しているという。
またMastercard社は、偽造カード被害に対する高い抑止力が期待される「完全IC化」に取り組んでいる。従来のクレジットカードの裏面には、黒い磁気テープが貼られているが、偽造リスクが高いことから、同社では、2024年から磁気ストライプカードを段階的に廃止することにした。同社のクレジットカードとデビットカードは2033年までにチップのみに情報を搭載した仕様へと生まれ変わるという。
今回は、クレジットカードのセキュリティ強化で注目が集まる両社の担当者に話を聞いた。
「スキミング」される磁気ストライプ廃止の動きが──
クレジットカードの不正利用の主な手口は「カードの偽造」や、銀行やクレジットカード会社を装い、偽サイトに誘導するなどしてクレジットカード情報を盗む「番号盗用」である。
カード偽造の主な原因となるのは、カードの裏面に貼られている黒い磁気ストライプだ。この部分はクレジットカードの番号などが入っており、情報を簡単にスキミングされる危険性が高く、偽造されやすい。
カード偽造の予防策として、世界中で進められているのが、カードの表面に情報を集約させた金色のチップを埋め込む「クレジットカードのIC化」である。ICカードに搭載されているICチップの偽造は事実上不可能だといわれている。日本よりも先にIC化に取り組んだイギリスでは、偽造カードの被害額が70%減ったというデータが残っているほどの効果が表れているという。
Mastercardは磁気ストライプ段階的廃止を発表
一方、日本では新規発行するクレジットカードの大半にICチップを搭載しているものの、店側に設置する決算端末がICに対応したものを広く普及できずにいたことから、カードの裏面に磁気テープが残り続けた。そんな中、2018年に「改正割賦販売法」が施行され、クレジットカードの加盟店が2020年3月末までに決算端末をIC化させることが義務付けられた。
こうした大きな動きがあったことからカードのIC化が進み、カード偽造による不正利用の被害額は年々減少している。一般社団法人 日本クレジット協会が公表した日本のクレジット統計によると偽造カード被害額は2018年(16億円)から2020年(8億円)で、8億円減少した。(参考:日本のクレジット統計 https://www.j-credit.or.jp/information/statistics/download/statistics_domestic_2020.pdf)
写真提供・Mastercard
ICカードでの支払いが世界中で定着してきたことを受け、Mastercardでは2024年から磁気ストライプカードを段階的に廃止することを公表した。2033年以降に発行するクレジットカードとデビットカードには、磁気ストライプをいっさい使用しないという。
同社のサイバー&インテリジェンス ソリューションズ(C&I)ディレクター丸山秀幸氏は「磁気ストライプはチップより偽造のリスクが格段に高く、また、チップの端末の設置は世界中で進んでいるため、今回の発表に至りました」と話す。