内子(卵巣)がとても濃厚な味わいで大変貴重なメスの「せいこがに」は、資源保護のため漁期が短く11月6日~12月31日までとなっている。また、「ずぼがに(またはみずがに)」と呼ばれる脱皮したオスガニはさらに漁期が短く、2月19日から3月20日までの30日間となっている。
皇室に献上される「越前がに」は、三国漁港で水揚げされる。今回は、この三国漁港がある福井県坂井市のDMOさかいの刀根瑛昌副会長(160年近くの歴史を持つ三国温泉の高級料理旅館、望洋楼の主人)に「越前がに」の魅力を聞いた。
越前蟹漁の様子
「越前がに」は漁獲量が限られ、ほとんどは福井県内のホテル・旅館・飲食店などで消費される。県外に出荷されるのは料亭・高級日本料理店や贈答品などごく一部に限られ大変貴重な蟹だ。海外での支持も伸ばしており、コロナ禍以前は、香港の美食家をはじめ多くの富裕層が「越前がに」を食べに福井に訪れていた。
2024年春、北陸新幹線敦賀(福井)まで延伸
全47都道府県幸福度ランキング2020年版(一般財団法人日本総合研究所編)において、福井県は、4回連続の「幸福度日本一」の県だ。2024年春には、現在金沢が終着の北陸新幹線が、敦賀(福井)まで延伸する。また、滑走路が1200mしかない福井空港にも注目が高まっている。滑走路が短いので定期便はないが、逆にプライジェットやヘリコプターの拠点として富裕層の利用にも期待が高まる。
関西経済圏、中部経済圏の福井県が、これからは東京経済圏にもなる。地域経済・観光の活発化、豊かなライフスタイルなど様々な分野で期待される福井県。今内外から注目が高まっている。
「越前がに」の歴史
越前のズワイガニ漁の歴史は国内で最も古いといわれ、「越前蟹」という名称が出てくる最も古い記録は1511年。室町時代の公家の三条西実隆公の日記に「越前蟹」という言葉が書かれていた。この頃、もうすでに京の都では「越前蟹」というブランドで認知されていたと考えられる。
また江戸時代の書物「越前国福井領産物」にもズワイガニの記載があり、カニ漁が盛んに行われていたことがうかがえる(昔は越前蟹と表記されていたが、平成19年の地域団体商標登録で、「越前がに」とひらがな表記に統一)。
越前ではこのように非常に古くからカニ漁をやってきた。これは、やはり圧倒的に陸からカニの漁場までが近く、出漁してすぐに漁獲できることが理由だろう。
福井県の漁場。陸から30キロ圏内と陸から近いところに多くの魚が生息しているのが特徴