営業やプレゼンに効く表情訓練
表情トレーニングアプリ「心sensor for Training」は、表情筋の動きを感情認識AIが解析し、どのような印象を与える表情をしていたかを採点・評価するアプリである。日本で最初の独立系ソフトウェア専門会社であるCACが、前述の感情認識AI「Affdex」を使って独自開発した。
「笑顔」「好感度」「お詫び」「真剣」を分析指標に、「自分の表情が相手からどう見えるのか」について人間の主観が入らない客観的な評価を知ることができる。ネットワークへの接続なしに表情訓練の実施と実施結果の確認ができること、アプリをスマートフォンにダウンロードすれば「いつでもどこでも」訓練ができることが特長だ。
また、採点モードでは音声解析技術で話している内容も採点できる。Speech to Text技術で練習生が発生した言葉をテキストに変換し、文字数から発話速度を評価したり、登録されているキーワードが含まれているか、台本を登録している場合には台本通りに話ができているかといったことを評価するのだそう。
このアプリでトレーニングを続ければ、営業、プレゼン、接客といった場面で、相手により好まれる表情や発話速度で接することができるようになるというわけだ。ただし、マスクを着用していると口元周辺の表情がきちんと推定できない。同じく、髪の毛で顔が隠れていたり、サングラスをしている場合なども結果に影響が出ることがあるため、顔をきちんと見えるようにしてトレーニングをすることが大切だ。
CACは今後、前述した4つの表情以外も評価項目に加えることを検討しているほか、トレーニングの成績上位者との比較機能、改善ポイント提示機能の強化、ジェスチャーや所作の可視化と分析、相手と自分の対話状態の評価などができるよう研究を進めている。
表情トレーニングアプリの活用事例
ここで、表情トレーニングアプリ「心sensor for Training」を導入している事例を2つ紹介したい。明治安田生命とリクルートスタッフィングだ。
自信を持って業務を行えるようサポートー明治安田生命ー
明治安田生命では、全国の「MYライフプランアドバイザー」と呼ばれる営業職員が、2020年9月から業務用スマートフォン(MYフォン)で「心sensor for Training」の利用を開始した。
「心sensor for Training」の練習画面
アプリ導入の目的は、顧客満足度および顧客サービスの向上だ。外出前の笑顔チェックに始まり、スマホならではのいつでもどこでも使えるセルフトレーニングに活用している。CACと明治安田生命が共同でアプリの開発を進め、順次バージョンアップを行っている。MYフォンを持っている3万7千名が全員利用できる環境である。
ゲーム感覚で笑顔を磨くーリクルートスタッフィングー
リクルートスタッフィングは、笑顔を磨くスマートフォン向けアプリ「心sensor for Recruit Staffing」を2021年10月にリリースした。笑顔を磨くことで就業先でのコミュニケーションを円滑にし、派遣スタッフが自分らしく働くことができるようにすることが狙いだという。
「心sensor for Recruit Staffing」画面。練習モードのイメージ
もともと同社は、登録スタッフが研修などで自社を訪れた際に自由に笑顔トレーニングができるよう、CACと共同で開発したWindows版の「心sensor for Training」を研修エリアに設置していた。だが、新型コロナウイルスの影響で集合研修を行うことが難しくなったため、アプリとしてカスタマイズして登録スタッフに提供することになったのだ。
34のフェイスポイントの動きを元に、7つの感情を理解した感情認識AIが練習者の表情をリアルタイムで分析してくれ、ゲーム感覚で手軽に笑顔磨きが実施できると期待されている。