EY
Entrepreneur
Of The Year
2021 Japan

2021 Finalist Interview

#08

フラー株式会社
代表取締役会長

渋谷 修太

地方創生DXのニューリーダー

フラー株式会社 代表取締役会長 渋谷 修太
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「地元・新潟県内ではあるのですが、親の転勤で頻繁に転校をしていました。住み慣れた街を離れると同時に、せっかく仲良くなった友だちと別れざるを得ないのが非常につらかったですね」

友だちを集めて遊ぶのが大好きだった渋谷少年。どうしたら友だちと別れずに済むのか。ずっと悩んでいたという。そして高専生当時に友人と集まったときに、「だったら、友だちと会社をつくればいい」と思いついた。

渋谷は国立長岡工業高等専門学校卒業後、筑波大学理工学群社会工学類へ進学し、インターネット企業のグリーを経て、その思いを2011年、高専生時代の友人4名とともに、フラー創業というかたちで実現した。

「起業というよりは、バンド結成のような連帯感がありました。私にとっては当時一緒に仲間と遊んでいた延長線上にある会社設立だったのです」

現在もなお、創業メンバーの他に高専生時代の仲間は10人以上在籍し、高専出身者が全社員の3割を占めているという。

フラー株式会社 代表取締役会長 渋谷 修太

「スマートフォンアプリからWeb制作、データ分析まで一気通貫でサポートするデジタルパートナーとして地方からDXを加速していく」──フラー
 代表取締役会長 渋谷修太

何をやるかよりも誰とやるか〜
高専生時代の友人4人で創業

渋谷の“友だち会社”の夢は叶ったが、ただ仲がよいだけの仲間だったわけではない。高専時代の級友は、彼にとって非常に刺激的な存在だったという。

「入学した時点で、教師よりもプログラミングが得意な人間がいるかと思えば、才能と夢にあふれた野心家もいました。折しもGAFAが存在感を高めていた00年、ITは最先端分野。その波に対してテクノロジーに長けた高専生が集まれば、成功すると考えたのです。
そんな優秀な彼らと“一緒にやればすごいことができる”、次代のソニー/トヨタをつくることさえ可能だと感じたのです」

憧れのソニー/トヨタのようにサービス名を社名にしないと決め、“世界一ヒトを惹きつける会社”を目指し、フラーと命名。何をやるかよりも、誰とやるかを重視して生み出された企業である。

そのメンバーで始めたのは、スマートフォンアプリからWeb制作、データ分析まで一気通貫でサポートするデジタルパートナー業。事業は軌道に乗り始め、筑波大学の後輩など、仲間は拡大し、あっという間に100人を超えた。渋谷はフラーの企業としてのあり方を、再び模索するようになった。

「フラーのメンバーとともに、Apple本社などのシリコンバレー企業を見学し、話を聞いているうちに“イノベーション施設”という空間の大切さに気づきました。プレゼンテーションひとつとっても、特別な空間で行うことで発想が研ぎ澄まされると考えたのです」

そんな矢先に訪れたのが、コロナ禍による緊急事態宣言の発令だった。

「フラーは社内DXが整っていたため、仕事はほぼリモートとなりました。そうなると東京圏にいることが本当に必要なのかという疑念が生まれたのです。ロケーションフリーな仕事が可能になり、故郷に帰っても仕事はできるのではないかと考えるようになりました。
そして新潟支社に本社を移転することを決めました。

フラーも11年目を迎え、はたして自分は故郷に対して、なにか恩返しができるのか、試してみたくなったのです」

そんな折、タイミングを見計らったかのように渋谷は、JR新潟駅前のイノベーション施設「NINNO」の存在を知る。

「イノベーション施設で、仲間とともに新たなチャレンジをできることに、ワクワクしました」

フラー株式会社 代表取締役会長 渋谷 修太

フラーが入居している新潟県最大級のITイノベーション拠点「NINNO(ニーノ)」

地元に対して自分たちは、
何ができるのだろうか

「NINNO」にはリユース業を営む「ハードオフコーポレーション」など、新潟を代表する企業もフラーとともに入居している。

一般的な机・イスだけではなく、床にそのまま座ることのできるスペースも備えた、特別な雰囲気を絵に描いたような空間である。入居企業が自由に利用できる共有スペースから交流が生まれ、イノベーティブな発想が生まれることも多いという。

そして「NINNO」に移った渋谷は、故郷の居心地のよさを感じるとともに、ビジネスとしての大きな飛躍の可能性も認識していた。

「新潟は自然も豊かですし、食もいい。しかし地元企業のDXは驚くほど進んでいません。スタートアップの数も少ない。これではせっかく故郷に帰りたいというUターン志望者がいても、働き口自体もないし、子育て環境も存在せず、エンターテインメントや仲間が集まれる場所も少ない。とても積極的に帰郷を促すことができない状態です。

しかしよく考えてみると、この状況は東京圏以外の地方のほぼすべてに当てはまることに気づきました」

一般的には、東京からDXを推進し、その流れを地方に波及させていくことが当然だと考えられている。しかし、地方である新潟の企業をDXすることで地方創生を実現できれば、その新潟のロールモデルは全国の各地域に当てはめていける。ひいてはそのソリューションは、日本全体を変化させることにさえつながる。渋谷はその可能性を確信したのだ。

「新潟は現在、長寿企業数で全国3位です。しかしそうした地元企業はみなDX以前の段階です。それをデジタルの力でアップデートできれば、事業基盤はより強靭になります。さらに私たちがハブとなって、新たなベンチャーと共創することができれば、イノベーションが必ず起こるはずです。

その結果、新潟が活性化し、スタートアップ企業が増えれば、働き口もまた増えていきます。そこまで行かなければ、Uターン/Iターンは現実的ではないと思うのです」

その思いを胸に、渋谷は「新潟ベンチャー協会」を立ち上げる。ここは上場企業、中小、老舗、ベンチャーなどさまざまな企業が集まり、行政も一緒になって、新潟を盛り上げるために、日々アクションを起こす団体だ。

「よりたくさんの経営者などのリーダー層が集まることで、一社だけではできないこともできるようになります。ここから新潟は明るい未来へ向けて、大きく羽ばたくのです」

地方創生〜都落ち感のない
ワクワクする故郷へ

従来故郷へ戻ることは“都落ち”と形容され、ネガティブに捉えられる傾向があった。しかしこの印象は、近い将来に必ず変化すると渋谷は言う。

「フラーの本社とともに新潟に帰ってきたことを、小・中学校時代の仲間が皆喜んでくれています。そして私たちに刺激を受け、自分たちで続々と起業を始めています。

そうした昔から知っている仲間を、東京時代はサポートできませんでしたが、新潟にいるいまでは、彼らを助けることだってできるのです。そして彼らが成功すれば、そのまま地域の活性化につながる。これこそ故郷への最高の恩返しだと思っています」

渋谷がフラーで目指すのは、さまざまな企業の中核に存在し、それらを複合的につなぐ“結節点”になること。そして故郷・新潟に帰ることが“ワクワクする”体験となるように街のあり方を刷新すること。地方から始まるムーブメントが都市部に波及する、そんな時代を彼は、つくり始めている。

フラー株式会社 代表取締役会長 渋谷 修太

「地方である新潟の企業をDXすることで、地方創生を実現することができれば、
そのロールモデルを全国の各地域・地方に当てはめていくことで、日本全体を変えることができる。
“都落ち”のようなネガティブな感情を抱くことなくワクワクした気持ちで地方にUターン/Iターンできる世の中にしたい」

フラー株式会社

本社/新潟県新潟市中央区笹口1丁目2 PLAKA2 NINNO

URL/https://www.fuller-inc.com/

従業員数/121名(パートタイマー含む)

フラー株式会社 代表取締役会長 渋谷 修太

1988年生まれ、新潟県出身。国立長岡工業高等専門学校卒業後、筑波大学理工学群社会工学類へ編入学。グリー株式会社を経て、2011年11月フラー株式会社を創業、代表取締役に就任。2016年には、Forbes JAPANにより30歳未満の重要人物「30 UNDER 30」に選出される。 2020年6月、故郷の新潟へUターン移住。2020年9月、新潟ベンチャー協会代表理事に選任。2020年10月、長岡高専客員教授に就任。ユメは世界一ヒトを惹きつける会社を創ること。

Promoted by EY Japan|
Text by Ryoichi Shimizu|
Photographs by Shuji Goto|
Edit by Akio Takashiro

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