EY
Entrepreneur
Of The Year
2021 Japan

2021 Finalist Interview

#04

さくらインターネット株式会社
代表取締役社長

田中 邦裕

IT業界の終わりなき改革者

さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中 邦裕
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「ロボコン(ロボットコンテスト)」参加に向けて、コンピュータの知識を学んでいた18歳の高専生が、遊びの延長のような感覚で96年にレンタルサーバー(ホスティングサーバー)会社を起業した。

世界中で双方向通信を可能にするインターネットだが、受信するだけでなく、企業や個人がホームページなどで情報発信するためには、世界中からアクセスできるサーバーコンピュータにデータを置かなければならない。そのサーバーを提供することで、“インターネットのインフラ”をつくり続けてきたのが「さくらインターネット」である。

四半世紀の間、インフラを支え続けてきた情熱は、どこから生まれたのだろうか。

インターネット黎明期から
変革を支えてきたインフラ・ビジネス

いまやインターネットは障害がなくて当たり前。エラーを起こせば社会問題に直結する事態さえ引き起こす重要なインフラとなった。しかしその道のりは平坦なものではなかったと、田中は振り返る。

「つねにトライ&エラー、チャレンジの日々でした。動かなくなる、動作が重くなるということがないように基盤システムを管理・改善し続けるのが私たちの役割。納品が存在しない、つまり終わりがないのがこのビジネスです。いかに長く使い続けてもらうかが勝負という点では、サブスクリプション・ビジネスでもあります」

そうしてインターネットの普及とともに「レンタルサーバーはさくらインターネットを選んでおけば間違いない」と、誰もが口にする時代がやってくる。

「口コミ中心に大きくユーザーが増えていきました。同時にスタートアップの支援も始めました。ITビジネスの成功の基盤には、サーバーがあります。ビジネスが成功し始めるとアクセス数が増えるため、快適なWebサービスを提供するためにはサーバーの数を増強しなくてはなりません。そんな黎明期のスタートアップに対して、サーバーを無料で提供したのです」

開設当初の「ミクシィ」も、さくらインターネットの無料提供により快適なサービスを提供できるようになり、人気に火がついた。他にも「2ちゃんねる」「はてな」「ニコニコ動画」などの大ヒットサービスが続々巣立っていく。

「もちろん、ボランティア意識からではありません。ITビジネスが成功すれば、より多くのサーバーが必要になるのですから。ビジネスを拡大することが利益を生むという、目的は一緒なのです」

2005年にはマザーズ上場も果たし、順風満帆に進んでいたビジネス。しかし11年に大きなピンチを迎えることになる。

さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中 邦裕

「動かなくなる、動作が重くなることがないように基盤システムを管理・改善するのが役割。納品は存在せず、終わりがないのがインフラ・ビジネスです」──さくらインターネット
 代表取締役社長 田中邦裕

『さくらのクラウド』導入時に
起きた最大の危機

インターネットは次第にインフラとして社会的にも認知されるようになった。そして次のITシーンの変化として日本に押し寄せてきたのが、Googleが06年に提唱した「クラウドコンピューティングの波」だった。

以前は各企業が独自にサーバー及びデータを保有して、サービスを展開するのが常識だった。しかしクラウドコンピューティングでは、データやアプリケーションをクラウドサーバー上に置くことで、各端末では特別なソフトウェアやデータがなくとも、サービスを利用できる。

「私たちも11年にIaaS型クラウド『さくらのクラウド』をスタートさせました。しかし安定して動かず、サービスが不安定なまま、解決に半年もの月日を費やしてしまったのです。ここで大きくインフラとしての信用を失ってしまいました。原因は当時購入していた外部のストレージ(記憶装置)。自社の優秀なエンジニアが、いちからストレージを開発することで、難局を乗り越えました」

そこからまた、信用をいちから積み重ねていく作業が始まった。さくらインターネットは、堅実にネット社会のインフラを構築し、少しずつ信頼を回復していった。

日本発の衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」は、そんな実績もあり、同社が経済産業省から受注した事業だ。現在Tellusには衛星データに加え、気象、人流などの地上データを順次搭載している。今後も随時Tellusのアップデートを行い、より魅力的なプラットフォームにしていくという。

つねにいちばんの
アントレプレナーでありたい

数々の困難を乗り越えてきた田中だが、物腰はやわらかで、笑顔を絶やさない。しかしその胸の奥にはつねに負けん気の強さがあり、“いちばんのアントレプレナーでありたい”という情熱が燃え続けているという。

そんな田中が5年前、大阪市のイノベーション創出のための施設「大阪イノベーションハブ」に講師として呼ばれた。この起業家・エンジニア・投資家などのスタートアップ関係者が集まる場がきっかけとなり、田中はあることを始める。

「それまでもサーバーの無料提供などでスタートアップを支援してきたのですが、そうした動きをより深めて、起業家個人の“メンター”としての活動を開始しました。事業をグロースさせるためには、インキュベーションも大切ですが、ビジネスを軌道に乗せるまでのメンタリングも大切だからです」

田中は個人としても、エンジェル投資家として25社に関わっているというから、その本気度が測られる。

さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中 邦裕

「起業家個人の“メンター”としての活動を開始しました。事業をグロースさせるためには、インキュベーションも大切ですが、ビジネスを軌道に乗せるまでのメンタリングも大切だからです」

さらには、福岡市による官民共働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」参画をきっかけに、独立行政法人 国立高等専門学校機構にも参加し、自らも出身である技術に特化した5年制の工業高等専門学校(高専)自体を作ろうとしている。

高専自体は近年、AIやロボティクス分野で数多くの才能を輩出していることからも注目を浴びている。その流れをより加速させ、そこからアントレプレナーをより多く生み出すために、田中は起業家のタマゴの段階での孵化の仕組みを構築しようとしているのである。

田中にとってはスタートアップの支援や起業家マインドを育むこと、さらには学生の支援も、インターネットの世界のインフラ整備と考えているようだ。

さまざまな自身のアクションについて田中は、その奥底にある感情をこう表現した。

「かつてはPC同士がつながり、協調して動くインターネット・システムの面白さに心を奪われました。そしてそれが自分の手の届かないところでどんどん広がっていくことに、楽しさを覚えていました。

相手はPCやインターネットから人間に変わりましたが、いまも同様に、基礎となる仕組みを構築して動かすことで、想像以上のグロースが起こることが、楽しくて仕方がないのです」

さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中 邦裕

ものづくりとAI技術で事業性を競う高専生の祭典「第2回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2021(DCON2021)」が開催された。田中がメンターを担った、福井工業高等専門学校の生徒たちのプランには過去最高となる6億円の企業評価額がつけられた。

さくらインターネット株式会社

本社/大阪府大阪市北区梅田1-12-12 東京建物梅田ビル11階

URL/https://www.sakura.ad.jp/corporate/

従業員数/連結706名(2021年3月末日時点)

さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中 邦裕

1978年生まれ、大阪出身。1996年舞鶴高専在学中にさくらインターネットを創業し、2005年東証マザーズ上場、2015年東証一部上場。IPA未踏のプロジェクトマネージャーなどとして、若手起業家や学生エンジニアの育成に携わるほか、業界発展のため、SAJ・JDCC等、各種団体に理事や委員としても多数参画。同社ではクラウドコンピューティングサービスを自社運営の国内のデータセンターを生かして提供している。

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Text by Kiyoto Kuniryou|
Photographs by Shuji Goto|
Edit by Yasumasa Akashi

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