松尾もアンドリューの意見に同調し、AIはDXの可能性を大きく広げていると指摘する。
「例えば入力に関しては、画像認識、文字認識、音声認識など、処理に関してはディープラーニングを使った自然言語処理やさまざまなタイプの予測モデル、異常検知などが挙げられます。出力では画像の生成や自然言語の生成、あるいはロボットの操作までをAIで行うことが可能になり、大きく精度が向上していることからも、AIはDX推進の重要なコア技術と言えるでしょう」
左竹川隆司 zero to one 代表取締役CEO/JDLA人材育成委員
かつてはGoogleもディープラーニングに懐疑的だった
では、AIを活用したDXにはどのような事例があるのだろうか。アンドリューは、2011年にGoogleの人工知能研究チーム「Google Brain」を立ち上げた経験について語った。
「当時はGoogle内部を含めた全員が、実はディープラーニングに対して懐疑的でした。最初のプロジェクトの1つとして、Googleの音声認識の精度を高めるために、私たちのチームはGoogleスピーチチームで研究をしていましたが、それは最重要プロジェクトではありませんでした」
つまり、Googleのようなテックジャイアントでも最初からAIをコア技術と捉えていたわけではなかったのだ。アンドリューによれば、多くの消費者向けインターネット企業がAI技術を学び、取り入れた過程が存在しているはずだと言う。Googleもその1社であり、アンドリューがプロジェクトを成功させることで、AIがGoogleの成長エンジンとなったのだ。
「クイックウィンをもたらしたことで、Google内で多くの人々がディープラーニングの力を理解するようになりました。その成功のおかげで、私は重要な共同プロジェクトを計画できました。それはGoogleマップに関するプロジェクトです。文字認識を活用し、Googleストリートビューの画像から住居番号を読み取ることで、民家の建物の位置をGoogleマップ上でより正確に把握することができるようになります。それが成功を収め、ようやく収益に直接的な影響を及ぼすオンライン広告チームとの本格的な話し合いが始められるようになったのです」
アンドリューによると、その後アメリカでは、ヘルスケア企業や製造企業、メディア企業でもデジタル化とAI導入への道程を歩み始めるようになる。