「考え」を仕組みに落とす
こうした「ロングセラー」や「三方良し」をベースにした南部の考えは、経営幹部だけでなく、「制度」をつくることで従業員に対しても落とし込まれている。
今回ランクインした「女性活躍推進」に関するデータを見ると、女性従業員の出産後の復職率が100%、子どものいる女性従業員の割合が33.6%と高水準だ。厚生労働省からも、女性活躍に関する状況が優良な企業として「えるぼし」の最高位認定を受けている。
南部は、「社会状況に合わせて働き方が変わるのは当たり前」として、「仕事と家庭の両立支援」につながる様々な制度をいち早く整えてきた。1997年から勤務時間の短縮や地域を限定して勤務できる制度を導入、2010年には事業所内保育所を開設するなど、仕事をしながら安心して子供を育てられる環境を整備した。
パソナファミリー保育園
ほかにも、ユニークな福利厚生制度が多数存在する。そのひとつが「マイ・ケア・デイ」。年1回の健康診断受診日を、心身ともにリフレッシュし、家族・子どもの健康もともに考える日、としているのだ。また、夢の実現に向けてチャンスをひろげる休職制度「ドリカム休職制度」もつくった。
「ワークライフバランスという言葉がありますが、企業経営においては、それに“社会”を付けた“ソーシャルライフワークバランス”が大切です。ワークもライフも個人的なこと。企業にとっては“社会”と“個人”とのバランスが大切なわけです。例えば、受験生の子どもを持つ親が『今年は家で子どもに寄り添いたい』と考えたときに、『専業主婦にならなければいけない』などといった固定概念にとらわれずに働ける、つまり“ソーシャルライフワークバランス”を実現できる環境を作ることが重要です」
「最強のサステナブル企業」を担うのは従業員
南部のようにサステナブルが染み付いたトップが率いるとしても、「サステナブル経営」を推進するためには従業員の理解も不可欠だ。
パソナグループは、連結で2万人以上の従業員数を擁する巨大企業。南部は自社を「正々堂々」という四字熟語になぞらえる。正々堂々の語源は、孫氏の『兵法』の一節「正正の旗、堂堂の陣」。大義名分という正々の御旗が立てれば、堂々とした陣営が組める、という考えだ。
南部はこうした組織をつくるために、リーダーとして「皆に分かりやすい言葉で伝えること」ことを特に意識しているという。
「まずは、ロングセラーや三方良しといった僕が大切にしている考えを、トップメッセージとして社内外で発信します。その姿を見た従業員は、考えを理解し、当社の従業員としての“心構え”を形成します。そして、その“心構え”が彼ら・彼女らの行動になり、最終的に企業の社格になるのです」
南部が幼少期から培ってきたサステナブルな考え方や、創業時から貫いている理念「社会の問題点を解決する」。これらを従業員が一丸となって推進することで、パソナグループのより大きな成長力につなげていく。