アメリカの各大都市にはそれぞれ日本人コミュニティがあると思われがちだが、「ジャパン」と冠を頂く小規模なショッピングセンターや公園がある程度で、全米を見回しても、街として認識ができるのはロサンゼルスの「リトルトーキョー」とサンフランシスコの「ジャパンタウン」だけだ。この2つの街が在米の日系人や日本人に与えている意味や望郷の価値は大きい。
カリフォルニア州では、増え続けるホームレス問題に知事自らが取り組むようになっている。特にサンフランシスコでは、日が暮れると、市庁舎や裁判所のあるテンダーロイン地区には、多くのホームレスが集まり、観光客の集客力が減少したりして深刻な問題となっていた。
双刃の剣となっている反対運動
現在、サンフランシスコは8000室のホームレスのための宿泊施設を確保しており、約1万人が滞在している。
住民の反対運動は、約7500名の署名を集めることをターゲットにしてきたが、まもなくゴールに届くことから、今後も市議会を通じて抗議や議論が続く見込みだ。
ただし、この反対運動は実に微妙な双刃の剣となっている。サンフランシスコは、1960年代末にはヒッピー発祥の地であり、ベトナム反戦運動の牙城ともなり、先住民や同性愛者などマイノリティといわれる人権弱者の保護をしてきた歴史がある。それにプライドを持つ街だからこそ、ホームレスの問題はとても微妙だ。
ホームレスになる人にはさまざまな理由がある。戦争を通じて深刻なうつ病になった人や、長くその土地に住んでいても地価の高騰で固定資産税が払えなくなっている人、病気で働けなくなったり不況で解雇されたりした人なども含まれる。
そのようなことを鑑みれば、この抗議活動は、普段人権問題について特段目立った貢献をしていない日系人のコミュニティが、自分たちの権益を守るためにホームレスの人権に対して配慮のない行動をしているとみられるリスクがある。
アメリカには「NIMBY(ニンビー):Not In My Back Yard」という言葉がある。直訳すれば「自分の庭だけは勘弁して」という意味だが、日本語のウィキペディアによれば「総論賛成・各論反対」と訳されている。
つまり、各種設備計画が起こったとき、総論では賛成するものの、それが自分たちの近隣に起こる場合には反対するという意味だ。