カリフォルニア州アラメダを拠点とする同社は9月8日、同社のアノードがプロアスリート向けのフィットネスデバイスで知られる「WHOOP」社のフィットネストラッカーWHOOP 4.0に採用されたと発表した。
同社はアノード素材の生産を拡大させ、2025年までにEVのバッテリーパック向けに提供することを目指している。元テスラのバッテリーエンジニアが共同創業したシラ・ナノは、同社の技術が、リチウムイオン電池分野における過去30年間で最大のブレークスルーになると述べている。
「我々の技術は、単なる科学的なブレークスルーではなく、あらゆるものの電動化を加速させていく」と、シラ・ナノの共同設立者でCEOのジーン・ベルディチェフスキーはフォーブスの取材に語った。
ベルディチェフスキーによると、同社のシリコンベースの負極は、従来のリチウムイオン電池に使用されているグラファイトを置き換え、エネルギー効率を20%向上させ、最終的には40%の向上を実現するという。
その結果、電池パックの小型化を実現することでEVの価格を引き下げ、重量を増やさずに航続距離を伸ばすことが可能になる。
EVや先進的なバッテリーのコストを抑える上で、シラ・ナノが提案するようなテクノロジーは不可欠なものになる。電池のストレージは、EVのパーツの中で最も高価な部品だが、バッテリーの製造は希少な素材に依存しているため、コストの引き下げは難しい。
ダイムラーなどから累計9億ドルを調達
テスラはEVの販売を拡大し続けているが、4万ドル以下のモデルを販売するのに苦戦している。ベルディチェフスキーは、2008年にテスラのバッテリーチームに参加し、10年以上前にシラ・ナノを共同創業した。同社は、ダイムラーのほか、Coatue Managementや8VC、ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ、カナダ年金制度投資委員会、サッター・ヒル・ベンチャーズなどの投資家から9億ドル(約985億円)以上を調達している。
シラ・ナノは、BMWやTDKのグループ会社のATL(アンペレックス・テクノロジー・リミテッド)とも協業している。同社は、2024年に北米工場を開設し、最終的にはEV 100万台分に相当する年間100GWhのバッテリー用負極材を生産する計画だ。
WHOOPの最新モデルの「4.0」は、シラ・ナノの技術を用いた従来の製品よりも薄くて軽く、5日間持続可能なバッテリーを搭載している。WHOOPの共同創業者でCTOのジョン・カポディルポは声明で、「ウェアラブルデバイスのデザインを進化させる上での最大の障壁は、バッテリーの重さと大きさだったが、シラ・ナノの技術でそれが一変した」と述べた。
「WHOOPとの取り組みは当社にとって最大のマイルストーンだ。創業10年の当社は、これまでの膨大な努力をようやく商業化することができた」と、シラ・ナノのベルディチェフスキーは語った。