ラザフォードは、陸軍の中尉に昇格したあるエンジニアの男性が、橋の建設を監督することになったときの話を紹介している。彼はすぐに、部下と一緒に、泥と汗にまみれた現場作業を始めた。模範を示すことで部下を率いることができると考えたのだ。
しかしそこに現れた上司は、彼を高台の木陰に連れて行き、作業を見るよう言った。彼はその涼しい木陰に立ってみて初めて、橋を間違った場所に建てていたことに気づいた。
「部下は、自分たちと一緒に労働をしてくれたリーダーに感謝しただろうか? それとも、作業時間を3時間短縮してくれるリーダーの方が良かっただろうか?」とラザフォード。男性は、部下から怠け者だとみられたくない、好かれたいと考えていた。だが、彼が取るべき行動はむしろ、短期的な痛みを伴うものだったのかもしれない。
「リーダーがすべきなのは、チームにとって最善のことであって、自分や自分のプライド、自尊心にとって最善のことではない。難しいが、それがリーダーの仕事だ。部下から『この人は自分たちにとって正しい決断をしてくれる』という信頼を得られれば、時間とともに尊敬や人気はついてくる」(ラザフォード)
自分にしかできないことをする
「上に行けば行くほど、自分がすべき実務は少なくなる」とラザフォードは語る。予定を会議で埋めるのではなく、リーダーとして自分にしかできないことをするために時間を空けよう。
ラザフォードは、テレビ司会者のチャーリー・ローズがビル・ゲイツとウォーレン・バフェットに対して行ったインタビューで、ゲイツがバフェットから受けた最高の教えの一つは白紙のカレンダーだと明かしたことに触れた。バフェットは自身がカレンダーとして使っている小さな手帳を見せたが、そこには毎月の予定が3~4件しかなかった。その理由はシンプルで、会議に参加するよりも、常に思考や行動のための時間を持てるようにすることだ。彼の財力をもってすれば、ほぼ何でも買えるが、時間は買うことができない。
ラザフォードは「階級が上がれば上がるほど、実際に『する』ことは少なくなり、障壁の除去やリソースの提供、向かう方向やペースが適切であることの確認がより重要になる」と説明している。