共感し、観察、傾聴する
共感は、人がどのようなシステムに基づいて動いているのかを理解する上で重要だ。共感力を培えば、他者の置かれた状況や立場を理解し、相手の考えや反応を予測できるようになる。共感力を発揮すれば、それまで考えたことがなかったような他者の意見や視点を理解し、受け入れることが容易になる。
しかし共感は完璧なものではなく、完全に相手の立場からものを考えることは不可能だ。時には、観察し、耳を傾けることしかできない場合もある。「米著名ジャーナリストのボブ・ウッドワードの言葉で私が気に入っているのは『沈黙に真実を吸い出させよ』というもの。他人を観察し、何が見て取れるかを非常に意識的かつ意図的に考えることで、自分の意識を向上させられる」(ビューロー)
謙虚さを「要となる習慣」に
チャールズ・デュヒッグは著書『習慣の力』で、「要となる習慣(keystone habit)」という概念を紹介している。その仕組みはシンプルだ。一つの中心的な習慣を選び、それに集中することで、その習慣を支える他の習慣が自然と生まれる。例えば、定期的な運動を始めると、自然と食生活が改善する。要となる習慣にすることで大きな結果につながるのが、「謙虚さ」だ。
ビューローは「謙虚さに含まれるものは多く、透明性や好奇心、無防備さ、共感など、多くのポジティブな性質につながる」と説明。「謙虚さとは、自分のエゴを抑えることだ」としている。これは交渉や日々の生活に非常に良い影響をもたらし得るものであり、凝り固まった考え方ではなく、開放的で受容的な姿勢を持つことができる。
システムの力
私たちが身を置くシステムが生活に与える影響を調べ、周囲の環境だけでなく私たちの行動にも影響を与えていることを示した研究結果は増えている。しかし、システムの力は一方通行ではない。ビューローが示したように、システムの力を意識することにより、その一部を自分のものとし、より良い交渉人のみならず、より良い人間になれるのだ。