日曜の夜を平常心で過ごす「睡眠のコツ」|元アマゾン産業医の相談室 #5

連載「元アマゾン産業医の相談室」 サムネイルデザイン=高田尚弥


締め切りに追われて、毎日3時間睡眠で頑張っている自分を想像してみてください。水曜日には作業効率は8割、日曜日には6割弱までに低下してしまいます。たとえ睡眠を削って仕事をしても、睡眠不足によりパフォーマンスが急激に低下してしまうことが理解いただけるでしょう。この研究からは、パフォーマンスを維持するためには5時間以上の睡眠が必要であることが示唆されます。

平日の睡眠不足を解消するためには、「1週間単位で自分のスケジュールを書いておく」ことです。はじめに睡眠時間を1週間のスケジュールに割り当ててください。これまで週末の寝坊に費やしていた時間、例えば土曜日3時間、日曜日2時間の合計5時間の寝坊の時間を、1時間ずつ月曜日から金曜日に割り当てる。睡眠負債(睡眠不足のこと)を平日5日に分割返済するイメージです。仕事で忙しくても、少なくとも5時間は睡眠時間を確保するようにしてください。

平日と週末の平均睡眠時間の差は2時間以内が理想なので、週末の睡眠時間は7時間程度が適切です。食事やお風呂・リラックスのための時間、趣味や家族・仲間とのための時間にそれ以外の時間を充てます。週末に仕事をすることは推奨できませんが、忙しい時は背に腹はかえられません。平日に睡眠時間を削るのではなく、週末に仕事のための時間を確保することで、作業効率の向上を目指してください。

睡眠の質を上げる環境づくり


これまで、太陽光の効果や、社会的ジェットラグについて紹介しました。これらに加えて、睡眠の質を高めるための環境づくりも重要になります。蛍光灯のような「白い光」は入眠を妨げてしまうので、家に帰ってから過ごすリビングや寝室においては、暖色系(オレンジ色)の照明の方が適しています。最近は色々な色調の照明が販売されています。入眠のためには、暖色系の照明を選ぶようにしましょう。

また、体温変化を利用することで、入眠を促進することもできます。湯船に浸かることで体温が上がり、その後湯船の熱が冷める(これを体温勾配といいます)ことで眠気を促すことができます。就寝前のPCやスマートフォンの使用はメラトニンの分泌を妨げてしまいます。またランニングのような運動は交感神経を刺激するため、入眠には逆効果になります。少なくとも就寝2時間前までには激しい運動は終えるようにしてください。その一方で軽いストレッチなどは副交感神経を刺激するので、良い睡眠の味方になります。

日曜の夜を平常心で過ごすために


平日は睡眠を削り週末を寝て過ごすのではなく、週末も平日と同じくらいの時間に起きて、1週間を通し平均した質の良い睡眠がとれる環境づくりを目指してください。平日無理な仕事の仕方をして睡眠を削り、その結果、週末を寝て過ごすよりも、週末も平日と同じように同じ位の時間に起きて規則正しく過ごす。そうすれば、日曜の夜も平常心で過ごすことができます。ただし効果を感じるまでは2〜3週間かかることをお忘れなく。

文=鈴木英孝 編集=石井節子 写真=帆足宗洋

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