日曜の夜を平常心で過ごす「睡眠のコツ」|元アマゾン産業医の相談室 #5

連載「元アマゾン産業医の相談室」 サムネイルデザイン=高田尚弥


1時間の「ズレ」をリセットするために必要な条件は、3つあります。(1)起床後、2時間以内に十分な太陽光を浴びる、(2)屋外で太陽光を浴びる、(3)少なくとも10分間は太陽光を浴びる、この3つです。

太陽光を浴びた後はメラトニンの分泌が抑制され、その約14〜16時間後にはメラトニンの分泌量が最大になります。メラトニンとは、脳内(松果体)で合成される催眠作用のあるホルモンで、ヒトはメラトニンの分泌により眠気を感じることができます。

メラトニンの分泌量が最大になるが最大に分泌するタイミングと就眠時間が合っていれば、自然に眠りにつくことができます。太陽光の照度(光の強さ)は、少なくとも2500ルクスが必要なので、室内では十分な照度を得ることができません(下図)。

通勤時には、自宅を出て最寄りの駅やバス停まで歩くことで、リセットに必要な太陽光を浴びることができますが、テレワークの場合は起床後そのまま仕事を始めることもあるので、十分な太陽光を浴びることができません。通勤時間に合わせた朝の散歩や、近くのコンビニにコーヒーを買いに行くなど、家から外に出る機会を作ることで、必要な太陽光を浴びることができます。

理想的な睡眠は、朝スッキリ起きることができる睡眠、そして日中に眠気を感じない睡眠です。ビジネスパーソンの睡眠時間は5〜6時間が多いようですが、人によって必要とされる睡眠時間は7〜8時間という場合もあります。

週末の寝だめは不調の原因


平日の睡眠不足解消のために、「週末の寝だめ」で月曜日に備えようという人がいますが、この「寝だめ」による疲労解消の効果は期待できないどころか、体の不調をきたす原因になります。

「週末の寝だめ」をすることで、体内時計のリズムが30〜45分間遅れてしまうといわれています。そして、体内時計のリズムが遅れることは、睡眠時間帯の後退につながり、結果的に月曜日の朝の目覚めが悪くなってしまうのです。このような平日と週末との睡眠時間および睡眠時間帯が大きくズレることを「社会的ジェットラグ」と呼びます。この社会的ジェットラグが長期間継続することで、体重の増加や糖尿病のリスクが高まり、仕事のパフォーマンスの低下を招くといわれています。

そのため、平日は睡眠を削り週末を寝て過ごすのではなく、週末も平日と同じくらいの時間に起きて、1週間を通して平均的な質の良い睡眠時間がとれる環境づくりを目指しましょう。

右下の図は被験者のグループを4つの睡眠時間(3、5、7、9時間)に振り分け、7日間の作業効率の変化を調べた研究です。3時間睡眠のグループでは3日目から作業効率が急激に低下しています。それに対して7時間と9時間のグループの作業効率の低下は緩やかで、5時間のグループはギリギリのようです。

次ページ > 日曜の夜を平常心で過ごすために

文=鈴木英孝 編集=石井節子 写真=帆足宗洋

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事