その一例として挙げられる不眠症は、パンデミックが起きて以来、約20%増加していると推定されています。これについては、医療機関とより緊密に連携することで、不眠症が心身の健康に及ぼす影響について意識を高めることができます。また、市販の医薬品は、初期段階の睡眠問題を解決するのに役立ちます。
一方、医薬品に頼らない解決策もあります。例えば、音楽を利用した患者治療の研究とデジタルプログラムであるミュージックケア(Music Care)は心拍数と呼吸数を減少させ、リラックスと睡眠を促進し、病院の患者において覚醒度と鎮静剤使用の必要性が自然に減少したことが臨床で証明されています。
解決策のひとつとして、睡眠の改善を支援するためにメンタルヘルスコミュニティと共にできることはたくさんあります。パンデミックによって、多くの人は自分の健康に気を配るようになり、日常的な運動量が増えた人もいれば、自炊を増やして食生活を改善した人もいます。しかし、良い習慣を継続するのは時に難しいことも分かっています。
ある調査では、自分は十分なセルフケアをしていると思うと答える人は40歳以下の成人では70%でしたが、医師や薬剤師の半数以上は、患者は十分なケアをしていないと答えています。メンタルヘルスの予防対策とセルフケアはパンデミック以前から注目されていましたが、これらを充実させることによってこの格差を埋めることができると考えられます。
パンデミックによって、既往の精神疾患レベルが悪化した(イメージ: Statista)
セルフケア方法の進化も
メンタルヘルスに対する意識を高めるだけでなく、具体的な行動を起こし、それに対応する適切な資金を提供し、支援するためのエコシステムを構築することも重要です。
5月に開催された世界保健総会でWHO担当者たちは、新型コロナウイルス感染拡大による世界的なメンタルヘルス状況の悪化を「集団的トラウマ」と称し、WHOの「メンタルヘルスアクションプラン」の改訂を支持する決定を採択。改訂事項には、自殺防止、職場のメンタルヘルス、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、子どものメンタルヘルス、人生全体のメンタルヘルス、メンタルヘルス疾患経験者の参加、といったテーマが含まれます。