草創期のアマゾンは、ひたすら有能な人物を採用し、その人物に適した場所を見つけようとした。あらゆることが次々と変化していくので、スキルよりも「やる気」を重視した。
アマゾンに入社した頃、わたしは宇宙開発について何も知らなかった。実際のところ、知っている人はひとりもいなかったのだ。なぜなら、その分野を生み出したのはわたしたちだからだ。わたしたちは毎日、それまで誰もやっていないことを行うことで、未来を創造していた。ジェフ・ウィルク(アマゾン・ワールドワイド・コンシューマー部門の前CEO)とわたしはほんの数カ月違いで入社した。わたしたちに日々課された仕事は未来を創ることだった。
就職面接の際、ジェフ・ベゾスはわたしにふたつしか質問しなかった。1問目は難しいクイズで、2問目はどうしてアマゾンで働きたいのかの動機だった。最初のクイズに答えられたことで、複雑な問題を対応可能なレベルに落とし込む能力があり、結果を導き出すまで熱意を失わずに取り組む人間であることは十分証明できたはずだ。
2問目について、目指す未来をつくりあげるためのアマゾンの取り組みに加わりたいという情熱も示した。宇宙船に携わる仕事ならどんなポストでもいいと思っていた。そのことをはっきりとジェフに伝えた。
のちにグーグルに移ったときも、同じように感じていた。まさか12年も勤めることになるとは予想もしていなかった。最初に配属されたのは副社長のマリッサ・メイヤーが率いる検索製品チームだった。彼女は最先端の製品をつくるチームを指揮していて、注目される存在だった。入社してから3年間、彼女のもとで働いた。彼女がヤフーのCEOになり、わたしがエリック・シュミットの主任補佐に抜擢される前のことだ。
エリック・シュミット(Getty Images)
グーグル在職中は、おそらく数千人の求職者を面接したと思う。グーグルの面接で高得点を得る決め手は、いかに「グーグルらしさ」を備えているかを示すことだ。具体的に言えば、こうなる。風変わりなところはあるか? 他人と違う部分はどこか? 誰も興味を示そうとしないことに飽くなき好奇心を抱いているか?
雇用における価値観の一致は、どれだけやる気のある人材を雇えるかにかかっている。スタートアップ企業は全速力でマラソンをしているようなものだ。自分から進んで動く人間をチームに迎えなければ前に進めない。無理強いされると人は消耗し、関心を失う。だから、やる気のあるなしがきわめて重要になる。
やる気や期待やペースが不揃いなスタートアップ企業を見ると、わたしはいつも雇用の際の質問のことを思い出す。
3. 誰を雇用するかがすべて
そう言っても信じない人も多いだろう。そういう人は「この仕事を完了しなければならない。だからこの仕事をする人が必要だ」と考える。その仕事を終わらせることだけに意識が集中していて、誰が、なぜその仕事をするのかを考えない。起業家の多くは事業計画や戦略を立てるときに何をどうやって成し遂げるかを考える。だが、わたしに言わせれば、誰がやるかですべてが決まる。
価値観が一致しているかどうかを確かめるための質問がある。一見とてもシンプルな質問だ。すべての起業家に自問してもらいたい。