誰に提供するのか、そのためには誰が必要か?
数々のこの上なくすばらしいアイディアが失敗に終わり、消えてなくなるのを、これまで何度も見てきた。同じ理念を持ち、なぜ一緒に働くのかをきちんと理解できる適切な人材を雇用しなかったためだ。逆に、アイディアそのものは凡庸でも、適切な能力を有する人々が、みな同じ目標に向かって励んだ結果、世界をあっと言わせる成果を収めた例もある。
アマゾンもグーグルも「何」ではなく「誰」に注力して1兆円企業になった。そして、そんな考え方をする起業家はあまりいないのだ。
ジェフ・ベゾスとエリック・シュミットのメンタルモデル
ジェフ・ベゾス、エリック・シュミットという偉大なCEOから直接学んだことを、できるだけ多くの起業家に伝えたいと思っている。このふたりの成功、アマゾンとグーグルの成功を見ても、彼らだからできたんだ、あの会社だからできたんだと思って学ぼうともしない人がいる。
だがわたしは、ジェフとエリックが今のように成功する前から、彼らをずっと見てきた1人だ。中期の混乱の極みにあった彼らの姿も見た。彼らがどうやってリーダーシップを発揮できるようになったかも見た。そんな彼らの成功を、1兆企業のリーダーだけでなく、どんなキャリアのどの段階の人でも大志さえあれば実現できることを伝えたい。
ただし、大志はわたしが与えられるものではなく、自ら抱かなければならない。ビジョンも与えることはできない。だが、大志とビジョンを持つ人には成功につながる秘訣をできるだけ伝授したいと思う。
大成功をおさめ、どんどん変容していく企業のリーダーであるジェフとエリックに共通する点を以下に挙げておこう。
1兆ドル企業のメンタルモデル
リーダーシップのDNA
わたしは、ジェフ、エリックの下で働いた結果、リーダーシップの精髄とは以下7点に尽きるという結論に達している。
1. とにかく好奇心が旺盛
新しいこと、とくにまだ誰もやっていないことに没頭する。無類の読書家である。どんなことにでも興味を示す。誘われたら断らない。自分が一番優秀とはいえない場所に進んで足を踏み入れていく。もっとも、彼らは様々な分野でとても有能なので、そういう場所を捜すこと自体が難しいのだが。
2. 長期的ヴィジョンを持っている
そのヴィジョンをチームの仲間と共有し、必ず実現すると心に決めている。
3. リスクを厭わない
4. 風変わり
人とは違う風変わりな面があると、ほかの人にはない未来を期待できるため、選ばれる資格があるだけでなく、ポストを得るに値するとみなされる。ジェフやエリックをはじめ、これまでわたしが一緒に働いてきた経営者はみな風変わりな性格という点で共通していた。そういう人は人との違いを受け入れ、人とは違うやり方をすることに快感を覚える。ただし、もともとそうだったわけではない。彼らがだんだんその快感に慣れていくのを、わたしは目の当たりにしてきた。