ベゾス、ヘリコプターから「からくも脱出」
わたしは生まれて初めて緊急取締役会を招集し、現地の病院に電話をかけまくった。メディアに騒がれては困るので、ジェフの名前は伏せて問い合わせ、ようやく捜しあてた。わたしが手配したヘリコプターが衝突し、ジェフはそのヘリコプターに乗っていた。今になれば、彼が無事だったこと、アマゾンが終わりを迎えなかったことは誰もが知っている。きっとジェフも、その話を楽しげに語っているはずだ。ぼくはヘリコプターから脱出しただけでなく、機内にいた三人全員を救い出したんだぜ、と。
あとになってわかったのだが、ジェフはテキサスでロケット試験場の土地の購入を進めていた。現在のブルーオリジンのための土地だった。アマゾンがまだ利益を出せる企業になるはるか前に、ジェフはそんな計画を立てていたのだ。
周知のとおり、ジェフがようやく宇宙旅行を実現したのはそれから20年後、つい先日のことだが、2003年にはもう、ブルーオリジンを設立するビジョンを抱き、「数百万の人々が宇宙で暮らし、働いて、地球に利益をもたらす未来」を創ろうていたのだ。それが今になって実現しただけのことだ。まさに並外れた長期的ビジョンではないか?
「1兆ドル企業の経営チーム」に共通する3要素
チーム全員が同じ使命やビジョンを持ち続けるのは至難の業だ。何年もかかることを成し遂げようとする場合にはなおさら難しい。「2つの1兆ドル企業」の経営チームに共通する、3つのフレームワークは以下だ。
1. 「自分はなんのためにその場にいるのか」を全員に理解させること
アマゾンとグーグルはこの点で非常に優れている。従業員は全員、会社の理念を述べることができる。それどころか、今日の自分の仕事が会社全体の理念の実現に関係し、成功に結びついていることを、インターンから上層部にいたるまでみんなきちんと理解している。
成功の秘訣はそこにある。個々の活動が全体に貢献するものであると全員が理解していれば、信じられないほどの力が発揮され、効率もあがる。
そのためにはまず、明確に記された企業理念の策定が大切だ。リーダーシップ基本方針もわかりやすく設定し、アマゾンのSチームのミーティングや全社でおこなわれているように、定期的に繰り返し実践することだ。
2. 「価値観が一致する人材」を雇用する
同じ志を抱く適切な人材を雇用すれば、従業員にやる気を出させるために無駄な労力を使ったり、徒労に終わったりすることはない。理念さえあれば人はみずから率先して動く。会社の将来を決定づける草創期や全員が同じ方向を向いて進んでいる初期段階では、この点はとりわけ重要だ。
問題が生じるのは、たいていの場合、その問題を認識していながら対処が遅れた結果である。ただ人数を補充するためだけに雇用し、適材適所になっていなければ、価値観の一致を目指した雇用とはいえない。
では、価値観の一致を実現するには、どんな人材を雇用すればいいのか?
企業理念を雇用面接の際の質問に落とし込んでいる会社はほとんどない。しかし、実際には基本的な能力よりも企業理念を念頭に置いて評価をすべきだ。基本的なスキルや能力の有無を確認したら、もっと時間をかけて、その人物が会社の望み通りの成果をもたらすことができるかどうかを評価しなければならない。