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Venture Capital

Chinnapong / Shutterstock.com

今から5年前、米国人のTammy Sunは不妊治療を開始するに当たり、会社の健康保険が適用されないことを知って愕然としたという。「不妊は重要な健康問題だ。保険料を支払っているのに、健康保険が適用されないことを知ってとても驚いた」と彼女は話す。

費用は3回の治療で約5万ドルで、彼女は全額を自己負担した。その後、彼女は費用を引き下げることで不妊治療をもっと身近なものにできないかと考えた。その当時、彼女はエバーノートに勤務していたが、自身の事業に専念するために2016年に退職した。

それから約1年後、Sunは不妊治療に従事してきたAsima Ahmad博士とJuli Insingerと共に「Carrot」を立ち上げた。Carrotは、企業の従業員に幅広い不妊治療プログラムを提供する福利厚生サービスだ。設立から4年が経った現在、Carrotは52カ国でサービスを展開している。同社がこれまでに処理した保険金請求は数千万ドルに達し、顧客にはペロトンやボックス、Samsaraなどの大手企業が含まれる。

パンデミックをきっかけに、人々は家族計画についてより真剣に考えるようになった。同時に、企業は従業員の健康を促進する福利厚生サービスの拡充を図るようになった。こうしたトレンドを追い風に、Carrotは堅調に成長した。

サンフランシスコ本拠のCarrotは、Tiger Globalが主導したシリーズCラウンドで7500万ドルを調達したと発表した。このラウンドには、他にOrbiMedのほか、既存株主であるF-Prime CapitalやCRV、U.S. Venture Partners、Silicon Valley Bankなどが参加した。調達額の大半はエクイティだが、一部はデットでの調達だった。

Carrotの累計調達額は1億1500万ドル(約126億円)となった。同社は詳細な業績を公表していないが、売上高は過去2年で5倍に増えたという。

「福利厚生市場において、不妊治療サービスはまだ新しく、成長過程にある。この領域を形作り、とりわけ若い家族向けにサービスを提供することのチャンスは大きい」と。OrbiMedのパートナーであるPeter Thompsonは話す。

導入企業は社員の採用活動でも有利に


Sunによると、Carrotは不妊治療を福利厚生に追加することで多くの人に身近なものにすると同時に、女性だけの問題として扱わないことを使命にしているという。

「不妊治療は人類全体にとっての医療だと我々は信じている。我々は、同性愛者を含め、あらゆる年代や性別を支援するために、企業向けにサービスを提供することにした」とSunは話す。彼女のこうした考えに基づき、同社は不妊治療だけでなく、代理母出産や卵子の凍結、養子縁組まで幅広い支援を行っている。

Carrotは、「Carrotカードプログラム」というデビットカードを従業員向けに発行しており、利用者は治療費を自前で支払わなくて済む。「米国人の大半は、貯蓄額が500ドルにも満たない。先に治療費を立て替えて、後から精算するという方法は、不妊治療を普及させる上で阻害要因になる」とSunは話す。カードは、Carrotが提携する不妊治療クリニックのみで利用可能だ。

Sunによると、米国では勤務先を通じて医療保険に加入しているケースが多く、社会へのインパクトを最大化するためにB2B2Cのビジネスモデルを選択したという。彼女はまた、企業が優秀な人材の獲得や流出防止を図る上で、Carrotが有用なツールになり得ると述べた。

編集=上田裕資

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