側面2. SDGsは自主的に守るべきルール
もうひとつ、SDGsには重要な側面がある。SDGsは、自主的取り組みが基本でありいわば「やれる人がやれるところからすぐにでも着手しよう」というルールだ。そうしなければ、もはや地球規模の課題の対処に間に合わないという危機感が背景にある。
このため、欧州のSDGs先進国では2015年9月以降、ただちに活用が始まった。しかし日本には「自主的ルール」のなじみがなく、「やってもやらなくてもいい」となってしまう。また、横並び志向で、誰が業界の中でやっているのかを気にしたり、取り組む意味や、やり方について「お上」からの指針を待ったりと、いまだに解読作業が終わらない。
実はこの「自主的ルール」は怖い。どんどん差がつくからだ。ぼうっとしていれば置いていかれる。欧米に置いていかれるばかりか、国内でも埒外に置かれることになる。
日本の企業は横並び思考から一刻も早く抜け出して、すぐにでも自社は何をすべきか、自分は何ができるかを考えなければいけないだろう。今ならまだぎりぎり間に合う。つまり、SDGsを「自分ごと」にする。自社に当てはめ、重点事項を選び、的確に発信するのだ。特に、SDGsの活用結果の対外的な説明責任が重要になる。
SDGsが日本に合っているとは限らないけれど…
松尾芭蕉の「不易流行」という考えがある。芭蕉の俳論といわれるこの考えは実にクールだ。サステナビリティ(持続可能性)の本質をうまく言い表す表現だと思う。
「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」(『去来抄』)というもので、「不易」=いつまでも変わらないこと、「流行」=時代に応じて変化することを指す。要するに、「変化しない本質的なものをよく見極める一方で、新しい変化も取り入れていく」という考えである。
今、国づくり・地域づくり・企業経営などに求められているのは、中長期的な展望に立った持続可能な設計だ。SDGsは、そのためのより良い方法を見つける“きっかけ”となり得る。
SDGsを盛り込んだ2030アジェンダでは、企業の力として創造性やイノベーション力に期待している。本業を使ってSDGsに貢献していくためにはどうすれば良いか──、それは次回以降のコラムでご紹介したい。