同財団ではD&Iを「性別・年齢・人種・宗教などによらず、お互いを尊重し、誰もがその人の持つ能力を発揮し、活躍できる状態」と定義。中でも、山田が問題視しているのが「ジェンダーギャップ」だ。
山田はメルカリでD&Iを推進する中で、「エンジニアのジェンダーギャップ解消」の難しさを痛感してきたという。実際、日本の女性エンジニア比率はわずか20%に留まるというデータもある(情報サービス産業協会調べ)。
そこで、この課題にアプローチするため「中学・高校時点でのSTEM(科学・技術・工学・数学)分野の女性比率を高めること」を目指し財団を設立。「営利でできることには限りがある。そのハードルを超えるために、非営利活動を立ち上げた」と、山田はオンラインで行われた記者会見で語った。
具体的には、2021年度の大学入学者におけるSTEMの女性比率18%という数字を、2035年までに28%に引き上げることが目標だ。達成するためには、STEMを選択する女性を1学年あたり1万1000人増やす必要があるという。
STEMの女性はメリットが多い?
現在、日本のSTEMの女性比率はOECD諸国と比較しても最低レベルだ。山田は、その理由として、周囲からの反対、ロールモデルが少ない&見えづらい、理系科目の先生に男性が多い、同級生の多くが文系を選択する、お金の問題(男女かかわらずだが)の5つを挙げる。つまり、男性に比べてSTEMを選択肢のひとつとして考える機会が少ない傾向にある。
ただ、STEMは男性にとってのメリットの方が大きいのかといえば、そういうわけでない。山田は「STEMの女性は社会に出た後もメリットが多い」と指摘する。まず、科学技術の発展に伴ってSTEMの重要性が高まっているため、今後も年収の増額が見込まれる。実際、メルカリのエンジニアの平均年収は約1000万円と高水準だ。また、柔軟な働き方が可能な職種が多く、成果が測りやすいので正当な評価を受けやすい点も利点だという。
こうした背景から、女子中高生のハードルを少しでも下げ、STEMを現実的な選択肢として考えてもらうために、奨学金事業をスタートした。
奨学金の応募対象は、国内の高校(理数科)・高専・スーパーサイエンスハイスクールを受験・進学予定の約100人。助成金額(年額)は、国公立で25万円、私立が50万円。より多くの学生に機会を与えたいという想いなどから選考は抽選で行う。初年度の支給は2022年4月〜を予定している。
さらに、社会的ムーブメントを作るために、ロールモデルによる発信にも力を入れる。ウェブサイトでは、宇宙飛行士の山崎直子やアーティストのスプニツ子!など著名人が学生に向けたメッセージを寄せているほか、8月22日には学生向けのオンラインイベントも実施する。