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2021.08.24 08:00

「TECH FOR GOOD」を社会に根付かせるPTCの挑戦

PTC ジム・へプルマンCEO

PTC ジム・へプルマンCEO

米国ボストンに本社があるPTCのジム・へプルマンCEOとお話しする機会を得た。PTCは製造プロセスの上流から市場までの徹底したデジタル化を推進する企業だ。CADによるものづくりの現場からはじまり、PLM(Product Lifecycle Management)で製造プロセス全体の管理をし、ARで作業現場の一人ひとりから消費者への理解促進をサポートする仕組みを一気通貫で提供できる「製造業のこれから」に貢献する。トヨタやボーイング、ファイザーなどがPTCのクライアントとして事例が出ていることからもその規模や信頼度が理解できるだろう。

PTCジム・へプルマンCEOのお話しを聞き、私が思い出したのは「TECH FOR GOOD」だ。2018年のフランスパリで開催されたVIVA TECHNOLOGYの併設イベントでFacebook、Google、IBM、Samsungそして楽天などのテクノロジー企業50社を招いて実施したテクノロジー企業トップ達の社会的イニシアチブだ。テクノロジーにより生まれた格差を解消するためにテクノロジー企業が手をとり教育などを中心にアクションを起こすことを目的としている。このサミットにはエマニュエル・マクロン大統領も参加し、その年のVIVA TECHNOLOGYのトピックとしても中心的位置付けであった。

さて、PTCジム・へプルマンCEOのどのような話が私にTECH FOR GOODを想起させたのか?

製造業にウーバー・エフェクトを


PTCは戦略として「フィジカルを変革するデジタル(Digital Transform Physical)」を中心に据えている。そしてその結果がヒューマン・インパクトを引き起こすと考えている。人間そのものへ影響するデジタルトランスフォーメーションとは企業に閉じるものではない。企業がPTCソリューションを導入することにより社員が恩恵を受けるとともに、ソリューションを活用するエンドユーザーやPTCがコロナ禍に力を入れ始めた学校教育への支援も含めて社会的インパクトを拡大している。

へプルマンCEOは「デジタルテクノロジーのSaaS化がテクノロジーの民主化につながると考えている」と述べる。「現在はデジタル・テクノロジーにアクセスできるかどうかで未来を切り開く選択肢の数が変わります。今後SaaSが進化し、テクノロジーが民主化されることにより高額なパソコンがなくとも多くの人たちにテクノロジーが活用いただけるようになります。

米国では『ウーバー・エフェクト(UBER EFFECT)』いう言葉があります。それは今までタクシー企業や配送企業だけに閉じていた仕事を、テクノロジーの民主化により一般ドライバーも新たな仕事が得られるようになる経済的効果のことです。PTCではこの『ウーバー・エフェクト』をSaaSやAR技術を使い、多くの現場の作業者向けにインパクトを起こしていけると考えています。

AIやロボティクスなどのテクノロジーは今までは現場の作業者の仕事を奪う存在として見られていましたが、AR技術が現場に投入されることにより、パソコンの前で仕事をしている人以外の方々にもテクノロジーの恩恵が受けられるようになります。

また、現場で働く方々がデジタルの力を使って彼らの能力をさらに強化することもできるようになります。

いままで議論にされていた『人間の脅威としてのテクノロジー』と逆の動きである『人間のエンパワーメントとしてのテクノロジー』の動きが出ているのも注目すべきポイントです。」

「『ウーバー・エフェクト』ですが、UBERは人や物を運びますが、ウーバー的な民主的な経済活動を社会に広げようとするとSaaSが必要になります。特にモノづくり企業活動は現在では一部の企業の中で閉じてしまっています。モノづくりの上流にUBERのような仕組みを取り入れるにはSaaSの浸透が欠かせません。エンドユーザーの良いアイディアを取り入れて一緒にモノづくりができるような仕組みがこれから生まれてくると信じています。そのような時代になると製造業であったとしても現在の会社組織のようなものがなくなる可能性があります。

良いアイディアを有している人の意見がモノづくりに反映でき、流通できるようになると、会社組織を運営するコストも削減できるようになります。私はそのような未来を描くことが非常に重要だと思っています。」


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文=西村真里子

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