トレーラーハウスでお葬式? コロナ禍でも変化する供養の形

なぜ葬儀や供養の形に変化がみられるのか(Shutterstock)

古来、人の死は厳粛なものとされ、人は葬儀や供養を通して死と向き合い、死生観を深めてきた。しかし近年、コロナ禍なども相まって、葬儀の形式や供養の在り方にも変化が見られる。

オンライン葬儀などの新たな弔いの形も現れてはきたが、「トレーラーハウス」が新たな葬儀の会場となることを、誰が予想しただろうか。トレーラーハウスとは、車で牽引して移動ができる家で、海外では住居や店舗として利用する人も多い。

日本初のトレーラーハウス内で行う葬儀を企画したのが、兵庫県尼崎市に本社を置く寺院サポートのコンサルティング会社「阪神総商」だ。「車輌」を葬儀の場として活用する発想はどこから生まれたのか。同社の田中元気社長に話を聞くと、コロナ禍を機に生じた人々の葬儀に対する意識の変化や、葬祭業界が直面する意外な課題が見えてきた──。

なぜ「トレーラーハウス」なのか?


トレーラーハウスといっても、内装だけ見ると普通の住宅と見間違うほどだ。実際、壁材や床材は通常の建築物と同じ素材で、電気や水道、ガスといったライフラインも完備、キッチンやバスルームも備え付けられていて、数人であればハウス内で生活するのに困らない。通常の住宅と異なる点と言えば、建物の下部に車輪がついていることと、建物の内部に祭壇などの葬儀に必要なスペースが設置されていることだ。

トレーラーハウス葬儀では、遺体が火葬されるまでの数日間、家族や近親者が建物内に自由に出入りしたり、寝泊まりしたりすることもできる。田中はこの異色の葬儀を企画した経緯について、次のように語る。

「トレーラーハウスは『車輌扱い』となるため、葬儀場を新設する際の建築許可が必要ないのです。

それと近年は、大きな葬儀会場が必要なくなってきているという時代背景もあります。高齢化社会になり、葬儀を開いても出席できる人があまりいない。少し前までは20〜30人規模の家族葬が多かったのですが、最近ではさらに小規模な直近の家族4〜5名のみで見送る家族葬が増えています。

それどころか『直葬(ちょくそう)』といって、亡くなった病院から安置所に搬送し、24時間経過後に火葬場現地で数分のお別れをするだけの葬儀自体を行わないスタイルも、コロナ禍を機にとても増えています。そうした家族葬と直葬の間になるものはないかと考えたのが、トレーラーハウスでの葬儀でした」
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文=河村優

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