それの何がいけないのだろう? アルコール度数が1%や0.5%変わるからといって、どんな違いが生じるというのか? その答えは三つある。
一つ目に、米政府の食品定義では、食事と一緒に飲む「テーブルワイン」はアルコール度数が7%以上、14%以下のものとされている。一方、アルコール度数が14%を超えるワインは、甘いデザートワインに分類される。つまり、アルコール度数が14.5%以上のワインは厳密にはテーブルワインですらないのだが、生産者側はこの点を全く気にかけていない。
二つ目に、アルコール度数14.5%以上のワインは、最初はしっかりとした味わいがありフルーティーで力強くても、しばらくするとバランスを失い、風味が落ちてしまう。
三つ目の違いは、飲んでみれば分かる。アルコール度数が14%未満の赤や白を一晩に2杯飲み、翌日夜には14.5%以上のものを飲んでみよう。2本目の方がアルコールの影響を感じ、1杯目で楽しめた味が、2杯目では渋かったり、甘ったるかったり感じることがある。
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こうした高アルコール度数のワインに居場所はあるのだろうか? その答えは「イエス」だが、楽しむには予備知識が必要となる。
イタリアのアマローネワインは、ブドウを干してレーズンに近い状態まで糖分を増やした上で作られ、わざとアルコール度数を高めて、ポートワインに近いしっかりとした味わいを持たせている。また、炭火焼きで黒く焦がした特大のサーロインステーキを食べる場合は、アルコール度数の高い赤ワインがステーキの鉄分とミネラル分にマッチする。ただ、2杯ほど飲み進めるとワインの方が前面にでてきてしまう。
これはもちろん個人の好みの問題だが、味のバランスがよく適度なアルコール度数の良いワインを飲み続ければ、その洗練された複雑な味や微妙な風味が分かるようになり、アルコール度数16%のカベルネに味覚を圧倒されることは好まなくなるだろう。