また、未成年ということでは奨学金の問題もあるだろう。日本学生支援機構が今年の6月に公表したデータによれば、学生の「2.7人に1人」が同機構の貸与奨学金を利用しているという。貸与奨学金とは平たく言えば借金であり、返済義務があるが、同機構が行った返済者に対するアンケート調査によれば、延滞者の半数近くは奨学金の申し込み手続きを行うまで返済義務があることを知らなかったという。
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日本の金融教育の現状と問題点
このように、さまざまな理由から子どもへの金融教育の必要性は年々高まっているのだが、日本では未だに金融教育を万人が受ける機会は存在していない。来年から高校の家庭科の授業で金融教育が始まるということはすでに紹介した。画期的な第一歩が踏み出されること自体は評価したいし、そこに冷や水を浴びせる気は一切ないが、おそらく十分な時間を金融教育に注ぐことはできないだろう。
また、日本では「金融教育=投資教育」と捉えられがちなことにも留意したい。資産形成をすべく投資のことを学ぶのは間違いなく金融教育の範囲ではあるが、それはあくまで全体の一部でしかなく、それ以外にも経済や税金の仕組みなど、知らなくてはいけないことはとても多いのだ。
もともと投資に縁がなかった日本人からすれば、「金融教育=投資教育」という捉え方が強くなりすぎると、本来の金融教育の普及を阻害する声が大きくなってしまう可能性もある。
実際、筆者自身も2018年6月から金融教育を普及させるべく株式会社マネネを創業したが、当時もいまも依然として「子どもにお金のことを話すな」というお叱りの言葉を受けることがある。これはひとえに「金融教育=投資教育」であり、「投資=悪、危険」という昔ながらの価値観が依然として残っている表れであろう。
とはいえ、筆者もマネネの創業当時は、学校教育の中で金融教育を盛り込めないかと関係各所とミーティングを重ねていたこともあり、その実現が非常に難しいことも十分に理解している。
それでは、どうすればいいのか? 1つの解決策は、筆者のような民間が注力するということだ。
金融教育で先行する米国でも国として1つのカリキュラムがあるというわけではなく、州単位で学習課程が設定されており、それとは別に民間の非営利組織や金融機関がプログラムを提供している。日本では地方自治体と民間が協力して金融教育のプログラムを提供していくことがいいだろう。
しかし、これもまた解消すべき課題は多い。地方自治体からすれば、どこからそのリソースを捻出するのか、民間企業からすればどのようにマネタイズするか、など実現させるためのハードルは高い。そうなると、現時点で最も現実的かつ有効性が高いのは家庭での金融教育ということになる。
金融教育と聞くと難しく感じるかもしれないが、まずはお金のことをざっくばらんに話し合える環境をつくるだけでもいい。おこづかいがどれくらい貯まっているか、いま何が欲しいのかなど、その程度の話から親子で話し合う時間をつくるだけでも大きな1歩であると考えられる。
なかなか外出もままならないコロナ禍の夏休みだからこそ、子どもとお金の話をしてみることをお勧めしたい。
連載:0歳からの「お金の話」
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