ワクワク、ドキドキ。福井県知事が語る「日本で最もしあわせな県」の戦略

左は杉本達治福井県知事、右は筆者(知事応接室にて)


鈴木幹一(以下、鈴木):福井県を東京から見ると、遠くてなかなかなじみの薄い県でした。それが北陸新幹線延伸で期待が膨らみます。最近は、海外からも福井県が注目されてきています。特に、伝統的工芸品や永平寺の禅の心に熱い目が注がれています。シャンパーニュ テタンジェやGODIVAなどの高級ブランドとのタイアップです。

テタンジェは、オーナー家のクロビステタンジェ氏が、以前より日本の伝統的工芸品に関心が高く、特に越前和紙には格別な思いがありました。昨年、親交のある和紙作家の堀木エリ子氏とマリアージュ、越前和紙包まれたテタンジェコト・ド・シャンパーニュ2008を限定販売しています。


コント・ド・シャンパーニュはシャンパンの伯爵という意味で、テタンジェの最高グレード。シャルドネ100%の最高傑作。この箱に越前和紙が使われている

高級チョコレートブランドのゴディバジャパン(東京)は、昨年丸の内に新しくオープンしたGODIVA caféで、曹洞宗大本山・永平寺の「禅」の精進料理文化をテーマに置いたビーガンスタイルにアレンジしたメニューを2月から3月まで発売し人気を博しました。


「エルダーフラワーウメネード」。福井で作られる「黄金の梅ジャム」と、エルダーフラワーのコーディアルを使用した梅風味のレモネード。色とりどりのエディブルフラワーをあしらっているので見た目も楽しめるドリンク。(福井食材:黄金の梅ジャム、エディブルフラワー)

このように海外からも注目度が高まっている福井県ですが、今後北陸新幹線福井延伸に伴い、福井県が力を入れて行かれる分野についてお聞かせください。

杉本達治福井県知事(以下、杉本):まず観光経済面ですが、2024年春の北陸新幹線福井・敦賀開業により、これまで結びつきが強かった関西・中京方面との交流に加え、新たに首都圏や北関東、長野、軽井沢などとの交流が新たに生まれることとなります。

日本政策投資銀行の試算(2020年2月)によると、北陸新幹線福井・敦賀開業により、首都圏から鉄道利用による観光やビジネスによる入込客数は、現状から約71万人増え、倍増の142万人となります。本県では、北から順番に芦原温泉駅、福井駅、越前たけふ駅、敦賀駅の4つの新幹線駅が開業します。

例えば、あわら温泉は、北陸新幹線の芦原温泉駅が新しく出来ます。ここから東尋坊や越前蟹で有名な三国温泉、曹洞宗の大本山永平寺、恐竜博物館、越前和紙、越前漆器、越前打ち刃物、越前焼きなどの伝統的工芸品の産地などを周遊することが出来るようになるため、観光の多様性が増し魅力度が増します。


福井県が誇る景勝地、東尋坊。今後、絶景を楽しむ仕掛けやアクティビティの導入、エグゼクティブ層向けのリゾートホテルや厳選食材が楽しめるオーベルジュを誘致するなど、ラグジュアリーリゾートの形成を目指す。

福井の玄関口となる福井駅の西側では、複数の再開発事業が本格的に進められております。ホテルやコンベンションホールなど、これまで不足していた都市機能が整備され、特に整備後のホテル部分には、米国のマリオット・インターナショナルが北陸三県では初めて進出してくることが決まっております。

飛行機で福井県に来る場合は、石川県の小松空港が便利ですが、実は福井県にも空港があります。滑走路が1200メートルと短く、大型ジェット機の離発着が出来ないので、現在は定期便の運行は無くグライダーやヘリなど一部の利用しかないのが現状です。今後は、滑走路が短くても離発着出来る国内外の富裕層向けプライベートジェット・ヘリの受け入れにも力を入れていく方針です。

福井空港から、越前蟹はじめ福井の高級食材を食べて、永平寺で禅の文化を体験する様な富裕層向け企画は、今後確実に広がっていくと期待しております。


越前蟹。最高級品種のズワイガニ。黄色いタグが特徴。大きなものは天皇陛下に献上されている

また、これからの産業のキーワードのひとつに、カーボンニュートラルがあります。世界初の全樹脂電池を自社開発したAPB(東京本社)による越前たけふ駅近くへ進出が決まり、5月に次世代型電池の新工場が完成しました。県内企業の中にも、全国への販売拠点となる工場を新設する動きなどが出てきております。今年度からは、企業誘致制度を強化しており、新しい価値を生み出す企業をプロジェクトに合わせて誘致することにも力を入れていきたいと考えております。
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文=鈴木幹一

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