アップルによるApp Storeの手数料率については、これまで人気オンラインゲーム「フォートナイト」を手がけるEpic Gamesや、音楽配信サービスのSpotifyに代表される規模の大きなデベロッパが「30%は高い」という声を上げてきた。
30%という手数料率の妥当性について、川口助教授は「ほかにアプリやゲームなどのコンテンツをオンラインで配信するプラットフォームもほぼ似たようなレート」であるコメント。さらに次のように話している。
「Epic Gamesの場合、手数料率のわりにアップルのデベロッパに対する直接的なケアが十分でないという不満を示しているようだ。しかし実際には目に見えない様々な便益もあるはず。同社の主張については一考の余地があると考える」
筆者もまた、一般にユーザーがオンラインでアプリやソフトウェアを購入する際、価格は重要な判断基準のひとつとしながら、大半が決済システムの安全性やアイテムの品質などを含めた全体の「信頼性」にも目を向けるものと考える。アップルでは「App Storeを厳選された安心・安全なアプリが集まる場所にするため」として、すべてのアプリをエキスパートが審査するReview制度を設けている。このようなシステムが提供する安心感もまたApp Storeの特長になっていると思う。
手数料変更が小規模デベロッパにもたらすもの
手数料率が変わることがアプリデベロッパにどんな利益をもたらすのか。
Whateverの関氏は、「一般にスモールビジネスから斬新なアイデアやサービスが誕生することも多く、フットワークの軽い会社により多く挑戦の機会が巡り、ヒット後の収益が増える仕組みができるのであれば歓迎されるべき」と話す。
今後App Store経済圏に期待することとして、川口氏は「App Storeがインプット(間口)の可能性をハードウェア開発の領域にも広げること」を挙げている。スモールビジネスを展開するデベロッパが、ハードウェアの研究開発とプロトタイピングの負担を軽減するためのリソースとして、アップルのように大きな企業から資金やノウハウの面でも支援を受けることができれば、デジタル経済の発展を牽引する原動力にもなり得るからだ。
多くのデベロッパは、より豊かな社会を実現するデジタルトランスフォーメーション(DX)を、それぞれのユニークな発想が生むアプリの力で実現するために前を向いている。デジタル経済の実態と影響力を把握することは困難だが、多様な視点を持つことにより浮かび上がってくる価値を知ることも肝要だ。
連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
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