企業はなぜスポーツにカネを出すのか? スポーツ神話の「終わりの始まり」から見えるもの

illustration by Jack Dally

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「オリンピックは高潔性を重んじる」
「スポーツを通じた人間性の形成」
「スポーツは筋書きのないドラマ」

スポーツをめぐる神話が、音を立てて崩れている。東京オリンピック・パラリンピックに関しては、いまも「金儲けの手段」「利権優先」との批判がやまない。スポーツの価値や意義が問われるなか、ぜひお読みいただきたいのが、7月26日に発売されるForbes JAPAN9月号だ。

特集「スポーツの『新しい稼ぎ方』」では、わかるようでわからなかったスポーツ×マネー、アスリート×マネー、企業×スポーツの関係に迫る。そもそもプロスポーツはどうやって儲けているのか? なぜ1人のアスリートに1億ドルものお金が集まるのか? 大坂なおみ選手や総合格闘家のコナー・マクレガー、日本のプロ野球球団から英プレミアリーグまで、国内外の成功事例をもとにその仕組みを紐解いていく。

この特集を企画するにあたり、大きな疑問があった。「スポーツビジネスは儲からない」とさんざん言われているのに、なぜ企業はスポーツにお金を出し続けるのか?

楽天グループを例に考えてみたい。同社は東北楽天イーグルスやヴィッセル神戸といった国内スポーツチームの経営権を取得しているが、2016年にはスペインの名門サッカークラブ、FCバルセロナとのスポンサー契約を発表。さらに翌年、米プロバスケットボールリーグNBAの人気球団ゴールデンステイト・ウォリアーズとも契約を締結している。

ちなみにバルサは、Forbes JAPAN9月号に掲載する「世界で最も資産価値の高いスポーツチーム」で4位、ウォリアーズは6位にランクインを果たしている。

IT企業の楽天が、スポーツビジネスに次々と大金を投じる理由はどこにあるのか。ウォリアーズと契約した際の三木谷浩史会長兼社長のコメントに、その答えが表れているように思う。

「スポーツをしたり、観戦をしたりという行為は、人々の感情を大きく動かします。グローバルカンパニーとして、スポーツを後押しすることは、私たちの企業理念を体現することなのです」

人々の感情を動かす──これこそが、企業がスポーツに期待する力なのだ。スポーツチームと契約することで、企業の認知度向上やブランディングといったマーケティング面のメリットが得られることは言うまでもない。だが、それ以上に、スポーツには人々の意識を変え、社会を変える力がある。

人を呼び、人を動かすために最大の効力を発揮するのがスポーツだ。収益をはるかに上回る効果が期待できるからこそ、企業も巨額の投資を惜しまないのだろう。
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