企業はなぜスポーツにカネを出すのか? スポーツ神話の「終わりの始まり」から見えるもの

illustration by Jack Dally


一方で、IT企業に代表される異業種の経営参入は、スポーツのあり方自体にも変化をもたらしている。

DeNAが、横浜ベイスターズの経営権を取得して10年になる。同社は、プロダクトをリリースしてユーザーの反応を見ながら修正していくというIT企業の手法を、プロ野球興行にも適用した。DeNAの岡村信悟代社長兼CEOはこう語っている。

「KPIを設定してお客様の熱量をデータで測りながらPDCAを回しました。ファンの反応に触発されてサービスを改善したり、チームが触発されて素晴らしいパフォーマンスをすれば、またファンが反応してくれる。このサイクルが自律的に回り始めて観客動員が年々増えていきました」

こうしてDeNAは、毎年25億円の球団の赤字経営を、5年で黒字化してみせる。昨年2月には横浜スタジアムの増改築も完了し、さあこれからというときに、パンデミックに襲われた。

年間228万人を記録した観客動員数は5分の1に激減した。そんな絶望的な状況に陥りながらも、岡村社長は復活を確信しているという。その根拠を、かつて東大大学院で歴史を研究していた岡村社長はこんなふうに説明した。

「スポーツの語源は“気晴らし”。生き延びることだけを考えたら、スポーツは役に立ちません。でも、人間が人間らしく生きるために、またスポーツ文化を必要とするときが必ずやってきます」

生き延びるために、スポーツ最大の祭典が是非を問われている。スポーツのもつ力が試されているいま、Forbes JAPAN9月号では「夢」や「感動」以外の角度から、スポーツの価値を掘り下げている。オリンピック観戦のお供にもおすすめしたい。スポーツビジネスの新しい可能性が見えてくるはずだ。


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