6社で運営、約110社が参加 ワクチン共同職域接種を支えた工夫

共同職域接種会場の様子

カスタマーリレーション事業を行うアディッシュが発起し、シェアリングエコノミーサービス事業のガイアックスなど6社が主体となり、共同職域接種が実施された。

7月13日午前10時頃、第一回の接種日に会場となるガイアックスが運営する永田町のシェアオフィス「Nagatacho GRiD」を訪れると、すでに接種を終えた多くの人が接種後の経過観察を行なっていた。午前9時半の開始から40分あまりで、200名以上の接種が完了したという。

「スムーズに行き過ぎて経過観察の席が足りなくなりそうなので、少しペースを落としています」

そう話すのは、発起人のアディッシュ経営企画本部長の松田光希と、ガイアックス人事総務部長の流拓巳だ。

5000人を対象に行われた共同職域接種には、都内の中小企業約110社が参加。各社の契約社員やインターンなど、非正社員を含む従業員とその同居家族も接種の対象とする。さらに一般社団法人シェアリングエコノミー協会の会員であるシェアワーカーやフリーランス、ガイアックスが運営するシェアサービス「TABICA」に登録するシェアワーカーと、家族・子ども向け出張撮影プラットフォーム「fotowa」に登録する写真家も対象だ。

自治体主体のワクチン接種に遅れが目立つなか、雇用形態にかかわらず多くの希望者を対象に、スピード感をもって共同職域接種を実施することができた裏には、どのようなノウハウや工夫があったのか。

スピードの裏に


2週間ほどの接種者募集期間には応募が殺到した。5000人を超えた後に申し込んだ人は、キャンセル待ちに登録できる。キャンセルが出るとキャンセル待ち登録をした人々へ一斉にメールが送られ、早い者勝ちで枠が埋まっていく。当日にキャンセルが出た場合も同様だ。このシステムについて、流はこう解説する。

「申し込む側にはキャンセル待ちになるかもしれず、確実に打てるかはわからないという前提を伝えていました。最初からそうした曖昧さを許容する企業しか受け付けていません。

また、私たちは全日程同時予約受付にはしませんでした。もし何かしらの理由で接種日をずらさないといけなくなると、全員が予約を取り直す必要がありますが、全てを同時にやることにはこだわらず、確実に決まったことからしかアナウンスしないようにしていました」

ガイアックス
アディッシュ松田光希(左)、ガイアックス流拓巳(右)

想定していた最悪のリスクは、ワクチンが届かないことだったという。ワクチンは、ちょうど1週間前に納品されることになっている。納品の確定連絡を受けるのが、さらにその1週間前だ。つまり2週間前まで納品確定かどうかがわからない。

ただ、松田は「でも予約がすぐに埋まることはわかっているので、予約受付開始も納品確定してから行うこともできると考えられますね」と語る。

会場設営も、どの段階でも変更できるように工夫した。運営に入った6社のメンバーは、社内外でのイベント運営などを日頃から行うことが多く、そこでの会場進行スキルが生かされた。もともと作ったレイアウトから、当日医療機関の視点から変更を提案されることを想定し、印刷物なども「受付」や「事務局」といった絶対に変更がないもの以外は印刷しないようにし、当日手書きで会場内の案内を作成した。

ちなみに松田と流は、自衛隊の大規模接種会場に2人で接種を受けに行き、会場のレイアウトや必要物資、導線や椅子の間隔などを記録して、参考にしたという。
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文=河村優

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