経済・社会

2021.07.21 07:00

6社で運営、約110社が参加 ワクチン共同職域接種を支えた工夫

共同職域接種会場の様子


スムーズな運営について、松田はアディッシュが行うカスタマーリレーション事業で培ったノウハウが生きたと話す。
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「カスタマーサポートって、サイトにログインできない、メールが届かない、予約できたかわからないといった、誰でも回答できるようなお問い合わせが8割以上を占めるんです。そういったよくあるお問い合わせを運営本体がやるとパンクしてしまう。なので問い合わせ窓口は作りませんでした。

参加する110社各社の担当者がカスタマーサポートの一次受付だと明言して、まずは社内の問い合わせは社内で完結するようにし、担当者が判断できないものだけ運営に上げるという2段階にしました。これだけで9割の問い合わせをはじくことができます」

110社各社の担当者は、運営チームが開設したSlackのチャンネルに入り、そのチャンネルで情報を随時得たり、社内で解決できない質問をこの場で投げかけることができるようにした。
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「我々は医療スタッフではないので、医療的な話はわからないことを明言し、その代わり、国やワクチン製造会社のマニュアルを示して、そうした質問は一切来ないように線引きをしっかり行いました」(流)

職域接種
会場は普段シェアオフィスや貸会場として使われる施設だ。受付を終えると写真奥のスペースで問診が行われ、その後手前のスペースで接種となる

また運営6社の役割を明確に分担したことも、迅速な意思決定を行う上で重要だったという。

「6社各社の1人ずつに領域別に担当を振り分けました。例えば流さんは会場担当で、A社の担当者はキャンセル対応を行い、B社は予約担当として予約システムやマニュアルを作るというように。6社で1チームですが、担当を会社単位で置いて、その領域に関しては各社に任せ切っている状態。いちいちお互いに質問しなくても全て意思決定を行っていいようにしました」(松田)

イレギュラーな業務に柔軟に対応できるよう、社内で環境を整えることも鍵となるという。

「人数が少ない会社で行う場合、社内の職域接種担当者が『この人はワクチンの対応を仕事としてやっているんだ』と明確に上司から認められ、社内から理解を得られていることは、実はかなり重要だと思います」(流)

少人数の会社では職域参加に心理的ハードルも


実際に今回の共同職域接種に参加した人たちに話を聞いてみた。

ガイアックスが運営するTABICAに登録し、自宅で料理教室を行うイギリス出身のStewart Dowardさんは、参加した理由をこう語った。

「とにかく早く、自宅で行う対面の教室と民泊を再開したいため、申し込みました。申請はとても簡単で、日本語が流暢でない私にとってはオンラインでの申し込みは簡単で迅速でした。今回接種を受けることができ、安心しました」

今回の接種に参加した企業のうち、従業員数が100名以上の会社は10社ほどで、ほとんどが50名以下の中小企業や、数名の企業もあるという。

共同職域接種へ参加した企業のうち、日程調整ツール「調整さん」などを手がけるミクステンドは、正社員や業務委託など全ての雇用形態の従業員を合わせて10名の企業だ。同社で事業開発を行う尾高文香は、参加を決めた経緯をこう語った。

調整さん
ミクステンド 尾高文香

「メンバーの健康を重視してワクチン接種についても積極的にアナウンスしたいと思っていましたが、従業員数10名の弊社にとっては職域接種を行うのに越えるべきハードルが高いなと感じていました。どこかの職域に参加したいと思ってもギブできるものがない。提供できる場所もないしネットワークも多くなく、参加しづらいという心理的ハードルがありました」
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文=河村優

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