スモール・ジャイアンツのアドバイザリーボードは、全国の中小企業にネットワークをもつ「目利き」として、受賞候補を推薦している。デジタル化や脱下請けが重要な課題となるいま、未来を担う若手の後継ぎは家業をどう経営していくべきなのか。第1回大会からアドバイザリーボードを務めるマクアケ代表取締役社長の中山亮太郎とベンチャー型事業承継代表理事の山野千枝が語り合った。
──全国の若い後継ぎと交流しておられますが、新しいビジネスがうまくいく会社にはどんな特徴があるでしょうか。
山野千枝(以下、山野 ):日本を代表する「アトツギベンチャー」といわれているような人たちに共通点があるとすれば、それは何も特別なことではなくて、ずっと行動をしている、歩みを止めていないということだと思います。家業に入ったときは何の権限もないただの若者だった人たちが、このままではいけないと小さな一歩を踏み出して、仮説検証をしながら行動し続けた結果が成功につながっているのです。
中山亮太郎(以下、中山):たとえ挑戦して失敗しても、みんな成功までの通過点だととらえていると思うんです。デジタルの手段が発展したことによって、いままでとは桁違いに低リスクで新しいことを始めていけるようになっています。
例えば、新しい商品をつくって売っていくというときにこれまでは大量生産をして日本中のいろんな店舗に置かなければいけなかった。それが、ユーザーに直接販売ができるEコマースや、先行販売型で受注生産ができるテスト販売のプラットフォームなどのマッチング手段ができています。昔だったら失敗すると一発でアウトだったチャレンジも、成功の途中といえるくらいのステップ論になっていて、何回もスイングが振れる。
──そうした変化のなかで、最近、注目している新しい動きや事例はありますか。
中山:いま、すごく注目しているのが、スタートアップ的なやり方を取り入れる後継ぎです。埼玉県のKOTOBUKI Medicalなど、新しい事業を始めるときに、家業のなかではなく、子会社をつくったり、資本関係のない新会社として始めたり、これまでにない資本政策で立ち上げる事例が増えています。
山野:同族経営のなかで新しいことをやろうとすると、人材が採用しにくかったり、資金調達をしたくて外部の資本を入れようと思っても、家族から反対があったりと、苦労することが多い。なので、別会社を立てて採用やブランディングをして、家業のほうは生産拠点として維持するといった具合に、上手な連携の仕方で展開しようとしているんです。
一方、私が注目しているのは、社外の関係人口を大事にする後継ぎが増えていることです。局所的な見方ではありますが、特に地方の30歳前後の後継ぎでは、会社の規模を大きくするのではなく、社外の関係人口を増やすことを通じて、より面白いサービスを実現したいという発想の人が多いんです。関係人口の増やし方も、会社と会社の業務提携のようなきっちりとしたかたちではなく、個人と個人が意気投合して自然発生的にプロジェクトが動きだす事例が増えています。