例えば、北海道網走郡の山上木工は、木工製品を展開していますが、道東エリアのいろんなクリエイターをネットワーク化することで面白い人たちがアメーバ式につながって、「オホーツクブランド」のものづくりで地域を盛り上げようとしています。こうした事例がどんどん出てくるといいですね。
中山:「いいものをつくろう」というお互いのリスペクトから生まれる取り組みは面白いですよね。いいものづくりをしていれば、値引きをしなくてもきちんと粗利が取れる商品になっていきますし、規模の拡大を続けなくてはいけないという合理性を追求するだけの経済圏に入らなくても、社員が家を建てられるくらい利益を出していける。
目指せ「超どローカル」
──コロナ禍で多くの中小企業が苦境に立たされています。この時代を生き抜く鍵はどこにあるでしょうか。
山野:優秀な後継ぎの皆さんから最近よく聞く言葉が「超どローカル」です。地方の会社は弱いと思われがちですが、実はそこにすごい優位性があって、若い人を中心にブランディングしていくことは大きな意味があります。コロナ禍自体は残念なことですが、根拠がないけれども常識とされてきたことや前例主義が覆される転機になった。逆に若い世代は張り切っていて、「おやじが自信を失っているいまこそチャンスだ」と行動を続けてほしいですね。
中山:いまはとにかく動いたほうがいいと思います。できる限り一次情報をたくさん取りに行って、ヒントを見つけたらスピーディに実行する人が次の時代をつかむでしょう。
<注目のアトツギベンチャー>
KOTOBUKI Medical
別会社設立で大型資金調達を実現
金属加工、機器設計などを手がける寿技研の2代目社長・高山成一郎が、脱下請けを目指し立ち上げた手術トレーニング機器製造部門を独立させるかたちで2018年に設立。コンニャク由来の模擬臓器「VTT」や、腹腔鏡トレーニングボックスなどを展開する。事業拡大のため、株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」を活用し、応募開始から26時間で8930万円(日本最高額)を調達。その後トレーニングボックスの販売数は3000台を超過、VTTでも医療機器の世界大手を顧客にするなど事業を軌道に乗せた。
山上木工
地域連携でオホーツクをブランド化
北海道網走郡津別町をホームとする木工品の制作会社。30年以上前から数値制御による加工設備を導入し、高品質で安定した生産を実現している。大手工作機械メーカーを経て家業に入った3代目の山上裕一朗は、道東エリアへの強いこだわりをもち、地域の多種多様なクリエイターに協働プロジェクトを働きかけて、「オホーツクブランド」の製品として世界に広めようとしている。一例として、自社製品の木工家具を輸出するコンテナの隙間に、地域の製品を混載して送る「隙間輸出」という取り組みを行っている。
中山亮太郎◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。
山野千枝◎一般社団法人ベンチャー型事業承継 代表理事。千年治商店 代表取締役。1969年、岡山県生まれ。ファミリービジネスの承継予定者を対象に新規事業開発支援を行う「アトツギU34」主宰。